社内DXはなぜ必要なのか IT化との違い、「2025年の崖問題」とは

はじめに?

みなさんは「DX」をご存知でしょうか。DXは経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」をきっかけに認知度が広がりました。様々な企業や分野においてDXが必要と提唱されていますが、具体的にどのように必要なのか分からない方もいるのではないでしょうか。

この記事では、社内DXがなぜ必要なのか、「IT化」とどのように違うのかを解説していきます。それでは、順に見ていきましょう。

DXとは

※画像はイメージです(Getty Images)

▼デジタルトランスフォーメーションの略称

DXとはDigital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)の略称です。明確に定義されているわけではありませんが、IT技術を活用し、社会をより良く変革していくことを意味します。主に社会や企業に対して使用されています。次の3つが定義として知られています。

・2004年

ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる(エリック・ストルターマン氏)


・2010年

デジタル技術とビジネスモデルを利用し、組織の変革を促す(マイケル・ウェイド氏)


・2018年

ビジネスモデルやプロセスなどの変革・競争優位性を確立する(経済産業省)

▼ビジネスにおけるDX

経済産業省は、ビジネスにおいてDXの推進は必須であることをDXレポートにて提唱しています。今後はIT化のみならず、その先を見据えた新しいビジネスモデルの確立が必要になってくるでしょう。

▼IT化との違いは何か

DXとIT化は、デジタルを利用する点では同じですが、目的が大きく違います。IT化とDXの違いは以下のとおりです。

・IT化


目的:既にある方法をデジタルに置き換えて、業務の効率化を目指す

例:訪問→オンライン会議、書類→ペーパーレス

・DX


目的:デジタル技術を活用し、新たなビジネスモデルを構築する

例:シェアリングエコノミー、Maasなど

既存の手段にデジタルを利用して業務の効率化を図ることをIT化と呼びます。DXは、シェアリングエコノミーやMaasのように、デジタルを利用して新たなビジネスモデルを生み出すことです。

社内DXが必要な理由

社内DXの推進が加速している理由として「働き方の多様化」「2025年の崖問題」「BCP対策」が大きく関係しています。それでは、順に解説していきます。

▼働き方の多様化

DXを取り入れることで、多様な働き方の実現が容易になります。働き方の多様化の一例にリモートワークが挙げられます。近年、コロナ禍により、リモートワークを取り入れる企業が増えてきました。リモートワークの導入により、場所を選ばずに仕事ができるようになっています。

また、育児や出産を理由に働くことを諦めていた人にとっても、正社員と同様に働くチャンスが増えるでしょう。ITやデジタルを駆使し、働き方を整えることは社員のパフォーマンスの向上にも繋がります。

▼「2025年の崖問題」への対処

DXを導入しないことで発生する危険性を3つ示唆しているレポートがDXレポートです。2018年に経済産業省より発表されました。

  • ビジネスモデルを市場に合わせて対応できなくなり、競争で負けてしまう
  • システムの維持費がIT予算の9割以上になり、多額の負債を抱える
  • システムの保守や運用ができる技術者不足により、トラブルのリスクが高まる

以上のような問題が発生し、年間の経済損失は12兆円を超えると言われています。これらを「2025年の崖問題」と言い、防ぐためにはDXの導入が必要とされています。

▼BCP対策としてのDX

BCP(Business Continuity Plan)とは事業継続計画のことです。主に災害を受けた際の業務の継続や復旧策として作成されていますが、全てのトラブルに対応するのは不可能です。

営業を主軸とする会社を例に挙げてみましょう。緊急事態宣言が発令され、対面での営業活動が困難になった場合、リモートワークへの切り替えや、オンラインでの営業活動などといった代替案が必要です。オフィスへの出社や顧客先への訪問ができない中でも、売り上げを確保し事業を継続するためのBCP対策として、新しい営業手法などのDXは重要とされています。

社内DX推進に必要な3つのポイント

※画像はイメージです(Getty Images)

DXの必要性を理解した上で、どのように推進していけばよいのでしょうか。ここでは、社内DXの推進に必要な3つのポイントを解説します。

▼DXを進める目的を明確にする

目的が明確でないDXは上手くいかない恐れがあります。具体的なビジョンを持つためにはゴール設定が大切です。実際に数値に落とし込む、PDCAを回すなどの取り組みが必要になります。

▼DXに対する社員の意識を変える

DXは経営層だけの取り組みではありません。経営のトップが舵を切り、会社全体で取り組んでいく必要があります。経営層のコミットはもちろんのこと、導入にあたって一人ひとりの意識改革も必要になるでしょう。

▼役割にマッチした人材を確保する

DXの推進にはITに特化した人材の力が必要になります。しかし、経済産業省の発表によりDXの需要がどんどん高まっているため、ITに特化した人材は常に不足しています。人材確保が難しい場合には、DXツールを利用してみるのも1つの手です。

まず取り組むべき3つのアクション

DXのために今すぐ取り組めるアクションとして、どのようなものがあるでしょうか。ここでは、コロナ禍を契機に推奨された具体的な3つのアクションについて解説します。できることから取り組んでいきましょう。

1.業務環境をオンライン化する

会社に出社しなくても問題なく仕事ができるよう、オンライン環境を整えましょう。リモートワークには、移動時間の短縮やコスト削減などメリットが多くあります。また、データを蓄積し今後の商談に生かす材料にもなります。まずは、パソコン1台あればどこにいても仕事ができるオンライン環境の構築からスタートさせてみてはいかがでしょうか。

2.業務工程をデジタル化する

業務工程で手間と感じている部分をデジタル化してみましょう。たとえば、契約書を電子化し捺印を不要にする、クラウドを利用したペーパーレス化などが挙げられます。書類や印鑑のために出社している様子が情報番組で取り上げられているように、日本のペーパーレス化は遅れています。まずは、現状の作業に無駄はないか、負担を減らす方法はないか洗い出してみましょう。

3.営業など顧客との接点をデジタル化する

コロナ禍の影響により、対面での営業は厳しい状況にあります。対面でなくてもコミュニケーションを円滑に取れるようにデジタルツールを活用しましょう。チャットボットや電話の自動応答ツールを用いたことで、クレームの件数が減ったという事例もあります。

【例】

  • 電子メール
  • チャットボット
  • オウンドメディアの立ち上げ
  • 電話の自動応答 など

まとめ

DXとは、IT技術を活用し、社会をより良い方向へ導いていくことです。日本の働き方は他国に比べても後れを取っており、このままの状態では年間12兆円の経済損失が生まれる恐れもあります。その危険性を回避するためにも社内DXの導入は必須です。オンライン化の整備や、業務のデジタル化など、身近なところからDXを推進し、取り組んでいく必要があります。


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