キャッシュレス時代、幼児も「お金」教育 無限と勘違い

    「お金に触れない」キャッシュレス決済が進む中、就学前後の子供にお金の大切さをどう教えればいいか悩む親が増えている。こうした不安に応える金融教育が活発化、子育て世代向け金融セミナーを開くファイナンシャルプランナー(FP)や、カードゲームなどで遊びながら学ぶ保育施設が人気を集めている。

    ビジネスすごろく「お仕事ボードゲーム」で遊びながら学ぶ園児(ヒーロー幼児園提供)
    ビジネスすごろく「お仕事ボードゲーム」で遊びながら学ぶ園児(ヒーロー幼児園提供)
     「お金の天才を育てる!『お小遣い教育法習得セミナー』」で解説する遠藤功二ZN代表取締役
    「お金の天才を育てる!『お小遣い教育法習得セミナー』」で解説する遠藤功二ZN代表取締役

    「キャッシュレス化でお金が見えないので、子供は無限と勘違いする。今は笑い話で済むが、このまま大人になったら大変」

    「お金の天才を育てる!『お小遣い教育法習得セミナー』」が26日、オンラインで開催された。講師を務めた金融教育サービス、ZN(東京都大田区)の遠藤功二代表取締役は、参加した保護者にこう話しかけた。名刺には「子育て世代対象 保険等を売らないコンサル型のFP」とある。

    「小学生になったら、いくら小遣いをあげればいいの」といった親の声を聞いて保護者向け金融教育セミナーを開始。小遣いは家庭での手伝いで稼ぎ、ためて使うことを説いてきた。最近はキャッシュレス対応という新たな悩みに応える。

    セミナーでは、お金の価値が分からない子供の金銭感覚を養うため、必要なものと欲しいものを区別し計画を立てたり、優先順位をつけたりして買い物をすることが重要であり、習得によりお金の使い方が丁寧になると伝えている。

    実践した親からは「値段を見て買うかどうか考えるようになった」などの声が届く。遠藤氏は「(電子マネーなどは)打ち出の小づちではない。子供にお金を管理させることが重要」と強調。「小学生に必要な金融リテラシー(お金の知識・判断力)を身につけてほしい」と力を込める。

    就学前から金融教育を学べると人気を集めている保育園がある。昨年4月に開園した東京都の認可外保育所「ヒーロー幼児園」だ。同園を運営するヒーロープロデューサー(同港区)の福嶋一郎代表取締役が編成した教育プログラムが評判を呼び、今年4月から定員いっぱいの45人が学ぶ。登園から午後3時ごろまで自由時間を設けず、語学や計算、スポーツ、IT教育など多彩な時間割をこなす。

    「やった。税金が払える」。社会の仕組みを知るビジネスすごろく「お仕事ボードゲーム」で遊んでいた園児が「税金」の枠に止まりこう叫んだ。税金をちゃんと払わないとパトカーも消防車も来なくなることを学んだからだ。

    このゲームでは、働いてお金を得て税金を払うことや、より多くのお金を得るには勉強や資格を取ることの大切さを理解する。知識吸収力に優れる子供だけに教育効果はすぐに表れる。福嶋氏は「自分のお小遣いをどう使おうか考えるようになる。お金があることが当たり前とは感じなくなる」と話す。

    金融教育の重要性は高まっており、今年度から高校家庭科で資産形成の授業が始まった。しかし学校で金融教育に割く時間は多くなく、その役割を家庭が担うことになる。しかもキャッシュレス化で、紙幣や貨幣を通してお金の価値を知る機会は減少。電子マネーで買い物をする親を見た子供は「お金は無限にある」と勘違いしてしまう。

    このため就学前後から金融教育を学ばせたいと思う親は少なくない。早いうちからお金との付き合い方でいい習慣を身につけると豊かな人生を歩み、幸せになれると考えるからだ。

    これが金融教育の目的といえ、「子供がお手伝いで得たお金を財布に入れて買い物に行くと、お金のありがたみを実感できる」。遠藤氏はこう指摘する。(松岡健夫)


    Recommend

    Biz Plus

    Recommend

    求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)

    求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)