マスク 外す?外さない?不要局面でも「人目が」

    暑く、じめじめもするこの時期。新型コロナウイルス禍で3回目の梅雨どき、そして、夏となる。熱中症などへの懸念から、政府はマスクについて、屋外で人との距離が十分とれるような場合には「不要」としているが、街にはマスク姿が目立つ。背景には日本ならではの考え方や「周囲の目が気になる」といった心理がありそうだ。オフィスワーカーや若者、親子連れなど、マスクについての思いをたずねた。

    徒歩での通勤など、マスク不要とされる場面でも、ほとんどの人が着用したままで行き交っていた=3日午前、東京都千代田区(岩崎叶汰撮影)
    徒歩での通勤など、マスク不要とされる場面でも、ほとんどの人が着用したままで行き交っていた=3日午前、東京都千代田区(岩崎叶汰撮影)

    着けたり外したりが面倒

    日差しが照り付ける東京・大手町。夏日となった2日、上着を脱ぐ人が目立ったが、ほとんどがマスクを着用していた。会社員の男性(24)は「屋外の人が少ないところでは外しても、人が増えるとマスクを着けることになる。着け外しが面倒」と話した。

    「先月、両親がコロナに感染したこともあり、マスクを外そうとは思えない」

    こう話す会社員の女性(26)は、コロナ禍前からファッションとしてマスクをしていたといい、「暑い日でも、それほど違和感はない」と話した。買い物中の60代女性は「マスクの中で汗をかいて肌が荒れることもあるが、感染したことがあるので、人に迷惑をかけないことと用心のためにも外せない」と語った。

    一方、都心にありながら、ジョギングの名所となっている皇居周辺では、マスクを着用していない人が目についた。無職の男性(28)は「暑くて外した。屋内や電車内ではするが、1人で外を歩いているときに外していても影響はないと思う」とした。

    外す流れになってほしい

    買い物客や若者でにぎわう東京・渋谷のスクランブル交差点。人々がすれ違う状況だが、マスクを外して歩いている人は少ない。

    ただ、交差点の密集を外れるとマスクを外す姿も。飲み物を手にした人や、外国人らのグループが散策を楽しんでいた。

    若者が多いセンター街を訪れていた女子大学生(20)はマスク姿。「暑くて外したいけれど、マスクを着けない人が増えるまでは…」と周囲の目が気になる様子。横浜市の女性(22)も「2割ぐらいの人がマスクを着けないようになったら外したい。世間が外す流れになってほしい」と期待をにじませた。

    マスクなしで歩いていた男性(34)は「マスクを着けていると、相手の顔が分からない」と語った。

    親子のコミュニケーション大切

    東京・代々木公園。夏日のなか、マスクを外した親子連れの姿が目立った。

    小学生と幼稚園児の娘2人を連れた女性(29)は「屋外ではマスクなしで遊ばせている」といい、「最近は保護者の間でも、そこまで気にはしていないような雰囲気」と話した。

    小学2年の娘と一緒にいた女性(41)は「マスクはこの3年の間で、子供たちにとっても当たり前になった」と話し、娘も「あまり気にならない」と口にした。

    「ママ友」同士で1歳と7カ月の子供を連れ、レジャーシートを広げていた30代の女性2人は「着用緩和の流れは大歓迎」と口をそろえる。その上で、「子供をあやすときはマスクを外している。まだ周りの目は気になるけれど、お母さんの顔が見えれば子供も安心すると思う」といい、「コロナ禍でも親子のコミュニケーションは大切にしたい」と思いを語った。

    厚生労働省は徒歩での通勤など、人とすれ違うが会話がない場合や、ランニングなど離れて行う運動、屋内でも人が少ない図書館のように距離がとれて会話がないケースでは、着用の必要がないとしている。ただ、こうした状況でも、マスクを外す人は少ない。

    新潟青陵大の碓井真史教授(社会心理学)は「罰則を設けてマスク着用を義務化した海外と異なり、日本は国民が自発的にマスクを定着させた側面が強い」と指摘する。

    その上で、「こうした流れで習慣化した行動を変えるのは容易ではなく、放置すればずっと続く可能性すらある」と説明。実際、勤務先の大学では、距離がとれて会話がない授業でもマスクを外す生徒はほとんどいないという。

    碓井教授は「感染の不安からではなく、周囲の批判を気にしてマスクをする人が今は特に多いように思う。不要な場面でマスクを外してもらうには、国や専門家などのリーダーが現状より強いメッセージを発する必要がある」と語った。

    (桑波田仰太、長橋和之、深津響、末崎慎太郎)


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