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不確実性増す発電事業 九電が千葉LNG火力撤退

九州電力が15日発表した千葉県袖ケ浦市の液化天然ガス(LNG)火力発電所建設計画からの撤退は、新たに電源開発を進める難しさを浮き彫りにした。九電を含む大手電力事業者は、燃料価格の高騰で電力小売りの採算が悪化し、大規模投資が難しくなっている。国際エネルギー情勢の激変で電力の安定供給が国家的課題となる中、電源開発に参入する事業者が出なければ、需給の逼迫(ひつぱく)が常態化し、生活や経済活動への影響は避けられない。

千葉県袖ケ浦市で計画されるLNG火力発電所の完成イメージ
千葉県袖ケ浦市で計画されるLNG火力発電所の完成イメージ

燃料高騰追い打ち

九電は同日、取締役会を開き、撤退を決定した。東京ガスとともに数千億円を投じ、令和10年の稼働を目指して約200万キロワットの発電所を建設する計画だった。九電と共同で建設計画を進めていた東ガスは単独で開発検討を維持する。

九電は首都圏で電力小売り事業を展開しており、新たな発電所は首都圏の主力電源に位置付けていた。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻や、温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」の動きに伴い、燃料価格が高騰し、九電でも発電コストが上昇するなど厳しい経営環境が続いている。

九電は「プロジェクトを取り巻く諸情勢を総合的に判断し、継続的な経営資源の投入はとりやめることにした」と説明。東京ガスは同日、LNG火力発電所は「再生可能エネルギーの導入に欠かせない調整力として期待される」とし、開発検討を引き続き進めることを公表した。

進まぬ電源開発

袖ケ浦市での発電所計画は平成27年に構想が発表され、九電は長年、事業化に向けた検討を続けてきた。28年からの電力小売り全面自由化を見据え、最新鋭の石炭火力を建設して首都圏で家庭向け販売などに活用する予定だった。当初は出光興産を含む3社で計画したが、出光興産が撤退し、九電と東京ガスの2社が折半出資して新会社「千葉袖ケ浦パワー」を設立。燃料はLNGに変更していた。

ところが、計画を進める間にエネルギー情勢は激変した。国内の電力供給も綱渡りの状態で、電力需給の逼迫に伴い、政府は7月から7年ぶりに全国規模の節電要請を行う。

ただ、電力の供給力確保は進んでいない。電力自由化で参入した新電力の多くは発電設備を保有せず、卸電力市場で電力を調達して販売している。一方で、九電など発電所を持つ電力事業者は、採算性などの問題で発電設備を休廃止し、新設の動きも鈍い。東日本大震災以降、原発の再稼働も停滞している。

国は電力会社の競争を促す狙いで電力小売りを自由化し、発電所維持や新設などの資金の確保を目指して「容量市場」を創設するなどしているが、供給態勢は安定化せず、大手電力関係者からは「全くうまくいっていない」と冷ややかな声が漏れる。

電源開発は長期スパンの事業だが、エネルギーをめぐる環境は変化が激しく、今回の九電の撤退は「現在の状況では電源開発への投資はできない」とのメッセージにも映る。発電事業の魅力を高める制度整備は、待ったなしの重要課題といえる。(一居真由子)


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