ドゥテルテ比大統領退任へ 75%の高支持率維持

    【シンガポール=森浩】フィリピンのドゥテルテ大統領(77)が30日、6年の任期を終えて退任する。超法規的な麻薬撲滅戦争や国内メディアの弾圧など強権的姿勢が批判を浴び、対中融和姿勢も物議を醸した。一方で退任直前まで75%という高支持率を記録。強い個性で過激な発言を繰り出した〝暴言王〟は退任後も一定の政治的影響力を保つとみられている。

    ドゥテルテ大統領(ロイター=共同)
    ドゥテルテ大統領(ロイター=共同)

    「私の努力で成し遂げられる最大の成果を実現した」。ドゥテルテ氏は5月23日、任期の6年間を誇らしげにこう振り返った。

    2016年の大統領就任後、ドゥテルテ氏が最重要課題として取り組んだのは麻薬撲滅だ。容疑者と見なした人物を、司法手続きを経ずに殺害する撲滅作戦を展開し、無実の市民を含む最大3万人が殺害されたとされる。強引な手法に批判的だったオバマ米大統領(当時)を「売春婦の息子」と罵倒してまで作戦を進めたが、麻薬組織の跋扈(ばっこ)は続き、本人も公約の未達を認めている。

    また、批判的なメディアに圧力を加え、「ジャーナリストだからといって暗殺を免れることはない」と恫喝(どうかつ)。今月28日付でドゥテルテ批判を展開したニュースサイト「ラップラー」の法人登録を取り消すなど、最後まで強権ぶりを見せつけた。6年間で「民主主義の空間が大幅に縮小した」とは地元紙、インクワイアラーの分析だ。

    外交面では当初、中国への融和姿勢を強く打ち出し、米国との関係に亀裂が入った。だが、中国の覇権的な南シナ海進出を抑えられず、米国との関係修復に乗り出すなど軌道修正を図らざるを得なかった。

    批判を浴びながらも、ドゥテルテ氏が支持を集めたのは事実だ。インフラ整備計画「ビルド・ビルド・ビルド」を通じて資本を投下し、日本も関わる首都圏の地下鉄整備事業などが動き出した。地元政治コンサルタント会社パブリカス・アジアは、高支持率を誇るドゥテルテ氏について「最も人気のある大統領」と評し、退任後も政治的影響力が残るとの見方を示した。

    ただ、麻薬撲滅作戦をめぐって国際刑事裁判所(ICC)が「人道に対する罪」で捜査に着手しており、今後ドゥテルテ氏の手法の是非が改めて問われる展開もあり得る。インクワイアラー紙は「歴史がドゥテルテ氏をどう見るかは分からない。判断するには早すぎる」と指摘した。


    Recommend

    Biz Plus

    Recommend

    求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)

    求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)