ピロリ菌、がん検出 コロナの知見応用 検査キットのベンチャー「ICheck」 予防・未病に軸足

    新型コロナウイルスの検査キット需要に応えてきた健康関連ベンチャーが新たな収益源の育成に乗り出した。ICheck(アイチェック、東京都千代田区)はコロナ収束を踏まえ、自宅で行える「ピロリ菌検査キット」を発売したほか、健康・美容関連事業にも進出。さらに将来を見据え大阪大発ベンチャーとがん検出分野で業務提携した。「人生100年時代」で成長が見込める予防・未病市場向けに注力する。

    同社は令和2年12月の設立で、事業初年度に当たる3年11月期の売上高は35億8000万円だった。新型コロナの感染拡大を受けPCR・抗原・抗体検査キットの需要が好調で、売り上げの8割を占めた。

    今期は同検査キットへの依存度を引き下げ、予防・未病分野に力を入れる。感染状況が落ち着く一方で、健康状態を自ら把握し改善することへの関心が高まっているためで、金子賢一社長(43)は「コロナオンリーからコロナ以外にシフトするフェーズ2が始まる」と話す。

    今春発売した商品を手にするアイチェックの金子賢一社長(同社提供)
    今春発売した商品を手にするアイチェックの金子賢一社長(同社提供)

    第1弾として、胃がんや胃潰瘍などのリスクを高めるピロリ菌に感染しているかを検査する検査キットを4月に発売した。ウェブサイトで申し込み後、自宅に届いた検査キットで自分の尿を採取し、提携先の検査センターに郵送すると、最短当日中にメールで結果が通知される。価格は1回分4980円。

    陽性者には提携医療機関によるオンライン診療から薬(除菌剤)の処方・配達まで無料で提供する。さらに9月をメドに、その場で検査結果が分かる自己完結型キットを販売する予定。ともに日本初のサービスという。

    健康・美容分野にも注目する。健康をサポートするエイジングケアサプリメント「Returner(リターナー)」を4月末に売り出した。コロナ検査キットで得た知見を生かした商品で、体内を活性化させることで老化を遅らせる効果が期待される食品成分「NMN」に着目し、取り入れた。価格は30個入りで1万6200円。サブスクリプション(定額課金)モデルでの展開も目指す。

    「がんを臭いで検出できる可能性がある」。5月に阪大発ベンチャーの香味醗酵(大阪市西区)と業務提携した狙いを金子社長はこう語る。

    平成29年創業の香味醗酵は世界で初めて、全ての臭いを数値化し特定できる技術を開発した。病気特有の臭いから兆候をチェックすることで予防・未病につなげられるという。まず最初に共同で「がんを臭いで検出するための基礎研究」に着手し、ベトナムで臨床試験を始めている。(松岡健夫)


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