新型プリウス「エコカーの代名詞」復権へ 燃費向上、走る楽しさ追求
トヨタ自動車は米ラスベガス(ネバダ州)で8日(日本時間9日)、主力ハイブリッド車(HV)「プリウス」の新型車を世界初公開し、年末から日本を皮切りに発売すると発表した。走行性能や居住性を向上し、燃費はガソリン1リットル当たり40キロ以上になる見込みだ。エコカーの代名詞だったHVだが、ガソリンエンジン車の性能向上が進み、電気自動車(EV)なども普及、かつての輝きを失いつつある。新型プリウスの成否は次世代エコカーをめぐる主導権争いにも影響を与えそうだ。
走りの楽しさ強調
「(現行モデルより)低重心で、全長も長く、幅もある」
米国トヨタ自動車販売のビル・フェイ担当副社長はラスベガスで開いた発表会で、4代目となる新型プリウスをアピールした。
1997年に世界初の量産HVとして初代が発売されたプリウスは累計販売台数が350万台を超えるトヨタの看板モデルだ。
新型はHV技術の改良に加え、車の基本である車台などを一体的に開発して性能を高める新手法「TNGA」をトヨタ車として初めて採用。燃費だけでなく、操縦安定性や乗り心地を向上し、走りの楽しさをアピールする。
ミリ波レーダーやカメラで車や歩行者を感知して衝突被害を軽減する上級車(高級車と大衆車の中間クラス)向け先進安全システムなども採用している。
今回、お披露目の場所に米国を選んだのは、日本だけでなく海外でも販売を伸ばす必要があるためだ。一時はハリウッドスターが愛用するなど人気を博したプリウスだが、足元の販売には陰りが見える。
米国はガソリン安を受け、消費者の燃費に対する意識が低下。一方で、ベンチャーのテスラ・モーターズのEVなどが富裕層を中心にエコカーとして支持を集めている。
カリフォルニア州では今後、環境規制が強化され、自動車メーカーは販売する車両の一部を無公害車にする必要があるが、HVは無公害車から除外されるなど逆風も吹く。
欧州ではドイツ勢のフォルクスワーゲン(VW)やメルセデス・ベンツなどが充電可能でEVに近いプラグインハイブリッド車(PHV)を積極投入し、シェアを拡大。中国でもエコカー購入補助金の対象になるのは、一部のHVを除いてEVが中心になっている。
「HVでなければ消費者の購入対象にならない」(メーカー幹部)とされてきた日本でさえ、37キロの燃費を実現したスズキ「アルト」などの軽自動車や、低燃費で加速力のあるディーゼル車が存在感を高めている。
各国の環境規制が強化される中、ライバル各社は技術開発を加速。トヨタも昨年、世界初の量産燃料電池車(FCV)「ミライ」を発売したが、生産台数は年間700台で、燃料インフラの整備もこれからで、普及にはまだ時間がかかるとみられる。
買い替え需要見込む
プリウスは旧型を所有するオーナーが多く、買い替えだけでも一定の需要が見込める。トヨタが今後もエコカー競争をリードしていけるかは、豊田章男社長が掲げる「もっといいクルマづくり」の象徴といえる新型プリウスが世界の消費者に支持されるかにかかっている。(田村龍彦)
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