“黒船”EV普及へ「アクセル」 BMW参入で活気、価格競争激化

 

 海外自動車メーカーによる電気自動車(EV)の日本進出がいよいよ始まる。BMWジャパンは13日、EV「i3」を来年4月5日に日本国内で発売すると発表した。来夏にも投入するプラグインハイブリッド車(PHV)のスポーツカー「i8」と併せ、環境対応車の新ブランドとして売り出す。EV市場が伸び悩む中、“黒船”の来襲は起爆剤になる。

都市交通革新に自信

 「都市モビリティ(交通)に革新を起こしたい」

 BMWジャパンのアラン・ハリス社長は同日の発表会後、記者団に自信たっぷりに話した。

 i3はフル充電で200キロの走行が可能なうえ、オプションの発電用エンジンを積めば300キロまで走行できる。充電時間は家庭用コンセントで7~8時間、日本規格の急速充電器「CHAdeMO(チャデモ)」なら30分で済むという。増税後の消費税8%を含む希望小売価格は499万円(発電用エンジン搭載車は546万円)。

 i8は電気モーターと1500ccの直列3気筒ターボエンジンを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載したPHV。走り始めから時速100キロまで4.5秒で到達する高い加速性能が自慢だ。価格は1917万円。いずれも政府の補助金などは調整中という。

 海外勢初のEVの日本投入に賭けるBMWだが、普及は思うように進んでいない。

 国内メーカーは、三菱自動車が2009年に世界初の量産型EV「i-MiEV(アイ・ミーブ)」を、10年には日産自動車が「リーフ」を発売するなど世界に先駆けてきた。ただ、フル充電で200キロ程度という走行距離の短さや、充電設備の普及遅れが敬遠され、販売は伸び悩む。日産はルノーと合わせ、「16年度にEV販売150万台」を目標に掲げるが、今年7月までの累計販売実績は10万台しかない。トヨタ自動車(グループのトヨタ車体を除く)やホンダがリースにとどまっていることも普及の難しさを物語る。

 官民挙げ支援策整う

 だが、ここにきてEV充電器の設置台数を増やそうと、政府や大手4社が補助金を出すなど、官民挙げた支援策が整ってきた。充電設備が整えば、ユーザーの不安が解消される。「(普及に向けアクセルを踏むには)今がいいタイミング」(ハリス社長)なのは確かだ。

 BMWは、量産車では世界で初めて車台に炭素繊維強化樹脂を用い、スチール製より50%の軽量化に成功。製造工程で100%再生可能エネルギーを用いるなど、環境問題に関心の高い消費者にアピールする戦略だ。

 来年には、独フォルクスワーゲンが日本でもEVを発売する予定。トヨタがハイブリッド車(HV)「プリウス」の価格を下げてHV市場が一気に拡大したように、海外勢参入で価格競争が激化すれば「EV普及元年」となる。(田辺裕晶)

 大手自動車メーカーの主なEV戦略

        時期           内容

 三菱自 2009年 7月 「i-MiEV」を日本で発売

 日産    10年12月 「リーフ」を日本で発売

       11年11月 EV用急速充電器を日本で発売

 トヨタ   10年 5月 米テスラに5000万ドル出資を発表

       12年12月 iQベースの「eQ」を日米限定発売

 ホンダ   12年 8月 フィットEVを日本でリース販売開始

 BMW   14年 4月 「i3」を発売予定

 GM    13年夏   シボレー「スパーク」のEVを米国で市販

 VW    14年中   「up!」などのEVを日本で市販予定