国内鉄鋼“真の復活”なお時間 脅かす中国輸入材、忍び寄る供給過剰の影
国内大手鉄鋼メーカーに明るさが戻ってきた。大手3社の2014年3月期連結業績予想はいずれも前期を大きく上回る。円高是正により輸出が好調な自動車業界や東日本大震災からの復興に向けて繁忙な建設業界から旺盛な引き合いを受けているからだ。だが世界に目を向けると、東アジアを中心に需給は緩んだままで、外的要因からの脅威はまだまだ続く。国内鉄鋼メーカーの“真の復活”には時間を要しそうだ。
慢性的需給ギャップ
「全般的な傾向として需要は堅調度を増し、操業度も高まっている」。日本鉄鋼連盟の友野宏会長(新日鉄住金社長)は、国内鉄鋼業界の現状をこう総括する。
神戸製鋼所の加古川製鉄所(兵庫県加古川市)では、熱間圧延ラインの稼働率が1年前に比べ1割程度上昇した。連続操業も増え、生産スピードを上げて需要に対応している。
大手3社はいずれも先行きに強気だ。「アベノミクス」効果について当初、「素材産業への波及は他産業より遅れる」と指摘されていたが、円安効果が浸透、各社の実績を押し上げた。
中でも好調なのは自動車や建設向けだが、JFEホールディングス(HD)の馬田一社長は「造船でも(円安効果は)実感できる」と指摘する。造船業界も円安を追い風に海外勢に対する価格競争力が回復、造船向けの厚板需要も戻りつつあるからだ。円高下で取り組んだコスト削減効果も加わった。
一方、海外メーカーが置かれている環境は厳しい。アルセロール・ミタルは今期の利益見通しを引き下げ、ポスコは7~9月期の営業利益が前年同期比47%減った。世界的な供給過剰への対応ができていないからだ。新日鉄住金が時価総額で世界トップに立つなど躍進する日本メーカーとは対照的に、海外メーカーの凋落(ちょうらく)ぶりが目立つ。
だが、日本メーカーも今の好環境がいつまで続くか分からない。中国の粗鋼生産は月間6500万トン程度。2カ月で日本の今年の生産量見込み(約1億1000万トン)を超える。この驚異的な生産能力が慢性的な東アジアの需給ギャップを生み出している。
超強力鋼など日本の技術力に裏打ちされた鋼材は別だが、普通鋼などはどうしても価格で選ばれる。円高時に輸入材が幅を利かせた理由もそこに尽きる。「輸入材の流入量によって鋼材価格は大きく左右される。大きな脅威だ」と神戸製鋼の川崎博也社長は指摘する。
厳しい価格転嫁
円高是正で輸入材が減少したため国内メーカーは復活した。「裏を返せば、円高に振れれば一気に海外勢の台頭を許す」(鉄鋼メーカー関係者)
日本に輸出するだけの生産余力が中国にはあり、こうした状況は「10年程度は改善されないと覚悟している」(新日鉄住金の宗岡正二会長)。輸入材が攻勢をかける円高下でも利益を出せる生産体制を築くため、新日鉄住金、神戸製鋼は一部の高炉休止を決め、生産を縮小する。
鉄鋼メーカーと自動車メーカー各社の10~3月分の交渉はこれから本格化する。早期決着を狙う鉄鋼メーカーだが、需要側に「原料価格の情報などをしっかり握られている」(大手鉄鋼メーカー幹部)だけに、原材料価格の上昇分すべてを鋼材価格に転嫁しにくく、厳しい交渉となりそうだ。
コスト削減を進め筋肉質な経営体制を築き上げる一方で、厳しい値上げ交渉が待つ。国内鉄鋼メーカーが“復活”に向けて越えなければならないハードルの数は多い。(兼松康)
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