「三菱ブランド」復活の第一歩へ アウトランダーPHEV、燃費8%改善

 

 三菱自動車がスポーツ用多目的車(SUV)の旗艦モデルと位置付けるプラグインハイブリッド車(PHV)「アウトランダーPHEV」。7月に国内発売した新型車はエンジンとモーターを使用する際の燃費(ハイブリッド燃費)でガソリン1リットル当たり20.2キロを実現、従来モデルより約8%改善した。

 家庭で充電でき、環境負荷の少ないPHVはフォルクスワーゲンやBMWなどの欧州メーカーも積極的に投入している。2013年に初代を発売し、“先駆者”として市場を開拓してきたアウトランダーPHEVも環境性能や静粛性などを向上し、シェアを確保する考えだ。

 3モードを自動選択

 アウトランダーPHEVのハイブリッドシステムは、エンジンを使わずバッテリーの電気だけ使ってモーターで走行する「EV走行モード」▽エンジンで発電してモーターで走る「シリーズ走行モード」▽エンジンで駆動してモーターでアシストする「パラレル走行モード」-の3モードを持つ。走行状況やバッテリーの残量などに応じ、最適なモードが自動で選択される。

 今回の改良では、ハイブリッド燃費が従来モデルの18.6キロから20.2キロに、バッテリーの電気だけで走行できるEV航続距離についても60.2キロから60.8キロにそれぞれ向上した。

 エンジンだけの改良で燃費を8%改善するのは容易ではない。だが、開発陣は「ハイブリッドシステムは完成された技術ではない。燃費を改善する道筋がまだまだある」と奮闘した。

 取り組んだのが、システムの効率的な制御だ。発電のためにエンジンを回す場合、回転数を高くすれば短い時間で電気をためられるメリットがあるが、室内に漏れる音は大きくなる。今回、新型車は高級感を出すため、吸音材や遮音材などを使って車体側の静粛性を大幅に向上させた。このため、「室内の快適性を維持しつつ、理想的な回転に近付けることができた」(同社)という。

 回生ブレーキで充電

 エンジンのフリクション(摩擦)低減にも手を付けた。エンジンは燃焼する際に部品に無駄な摩擦が起きると燃費が悪くなる。そこで、ピストンのコーティングやオイルの改良を進めることで、フリクションを減らした。減速時のエネルギーでモーターを回し、バッテリーを充電する回生ブレーキも積極的に使用。電力消費の削減につながり、EV走行の距離を伸ばすことができる。

 細かい工夫もある。冷暖房を使用する際の燃料や電力の消費を抑えるため、ステアリングヒーターを標準装備。シートヒーターと合わせ、肌に触れる部分を温めることで室内温度を低く設定し、暖房使用に伴うエンジンの作動が最小限で済むようにした。シートにも赤外線を反射させる機能性素材を採用しており、過剰な温度上昇を抑制する。

 三菱自は2009年に軽自動車タイプのEV「アイ・ミーブ」を他社に先駆けて発売し、電動化技術を強化してきた。13年に発売されたアウトランダーPHEVは、燃費が悪く、環境性能も低いとされてきた従来のSUVと一線を画し、日本だけでなく、欧州などでも支持されている。

 ただ、足元ではポルシェやBMWなど高級車メーカーがSUVタイプのPHVを相次いで投入しており、競争環境は厳しくなっている。三菱自は新型アウトランダーPHEVを「三菱ブランド復活の第一歩」(相川哲郎社長)と位置付けており、欧州でも9月から販売を開始し、存在感を高める構えだ。(田村龍彦)