歴史あるクラウンは“日本料理” 「レクサスは日本人のシェフが作った洋食」
トヨタ自動車の高級セダン「クラウン」が今年、誕生60周年を迎えた。10月に大幅改良して発売した新型車は“日本専用開発”を前面に押し出し、日本らしい新色や加速性能を高めたターボエンジン搭載モデルを初めて用意。これまでのファンだけでなく、若い層にもアピールする。開発した秋山晃チーフエンジニアに改良の狙いやクラウンのこれからを聞いた。
--国内専用の高級車としてこれまで開発・販売されてきたが、CMなどで改めて強調している
「日本の道を走り込んで作ってきた。日本専用開発車というのを逆手にとってアピールしたい。われわれの世代もバブルを経験し、海外ブランドもたくさん見てきたが、やっぱり日本がいいと見つめ直しているように感じる。腕時計なども日本製に回帰する動きがある。メード・イン・ジャパンはいいものだということを強調したい」
--今回の改良では「アスリート」シリーズに、排気量2000ccのターボエンジン搭載モデルを初めて用意した
「(改良は)外だけでなく中身もかえないとお客さまにはわかってしまう。ターボエンジンを積み、走りを向上させた。ボディーの剛性を高めるため接着剤も追加している。生産ラインの変更が必要なため、普通の改良ではやらないが、工場などにも協力してもらい取り組んだ。クラウンの購入者の平均年齢は62歳くらいで、できれば40代半ばから50代に若返らせたい。ターボ車の購入希望者は狙った40~50代がきている」
--長年のファンが多いクラウンはどこまで変えるかが難しい
「先入観は作る側にもある。加速を良くしようとすると変速時のショックが出てしまい、『クラウンだからこれ以上はやっちゃだめ』という声もあった。ただ、走りにこだわるんだと発破をかけて取り組んだ。そのうえで、変速のショックも直すようにした」
--路車間・車車間の無線通信を使った運転支援システム「ITSコネクト」を初めて採用した
「クラウンは全方位の安全確保を目指してやってきており、すでに自動ブレーキやアクセルの踏み間違い防止、歩行者傷害軽減ボディーなども搭載している。ITSコネクトはインフラと協調しないとだめだが、交差点の事故を減らせる。クラウンがやることで他の車にも入るだろうし、インフラの整備が進めばいい」
--足元の販売の状況は
「消費税率引き上げの影響というより、セダンからスポーツ用多目的車やミニバンに乗り換えた人たちが戻ってこない。競合はベンツのCクラスなどだけでなく、法人利用ならクラウンではなく(高級ミニバンの)アルファードを選ぶ人も増えている。(新型クラウンの)月3700台というのはチャレンジングな目標だ」
--クラウンの今後の方向性は
「レクサスが日本人のシェフが作った洋食だとすれば、クラウンは日本の料理人が作った日本の創作料理だと思っている。(全面改良する)次のクラウンは15代目。徳川将軍家が15代だからというわけではないが、天下分け目の戦いだと思っている。クラウンの歴史が重すぎて、まだ早いというお客さまがいるが、そういうイメージを取り払い、若い人を取れるクラウンにしたい」
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