マツダの躍進、3人のキーマンが語る「小さい会社だからこそ」「選ばれ続けるブランドに」
マツダは11月8日まで開催中の東京モーターショーで、ロータリースポーツコンセプト「Mazda RX-VISION」を世界初公開した。ファンに向けて行われたスペシャルトークショーでは、開発担当の藤原清志氏、デザイン担当の前田育男氏、販売・マーケティング担当の毛籠勝弘氏が、低迷期の苦労やクルマ作りに懸ける思いなどを語った。(文・カメラ 大竹信生)
仲間を多く失うつらい時期も乗り越えてきた
司会者:まず藤原さんにお聞きします。マツダは2009年にクルマの主な部品をすべて、一から新しく開発しました。なぜ、マツダのような小さな自動車メーカーが大掛かりなことにチャレンジしたのか、その背景やどのように成し得たのかをお話ください。
藤原氏「もともと私たちは、2000年ごろに『Zoom-Zoom』というブランドメッセージを発して、お客様に『走る歓び』をお届けするという約束をしました。その翌年から黄色いアテンザを皮切りに、Zoom-Zoomを具現化した商品を出してきました。その中で、2001年に(リストラで)仲間を多く失うつらい時期も乗り越えてきました」
「アテンザを筆頭に2005年ごろまでお客様に高い評価を頂いて、素晴らしい成果を挙げましたが、そういうときに力を抜くという悪い癖がありまして、これではイカンと。金井(誠太)会長の『世界一を目指せ』という言葉を実現するには、やはりすべて作り直さない限り達成できないと痛感し、全部の部品を一から開発する決断をしました。すべては2000年のお客様との約束から始まったんです」
「小さな会社でよくこんなことができたねと言われますが、小さいからこそできたと私は思っています。企画開発からデザイン、生産、販売・マーケティングまで、これだけ長いリレーを、時間をかけて渡していたら、人とお金がかかるだけなんです。この3人は夜、ワインを飲みながら話をして、スパっと流れるようなコミュニケーションを取っています。小さい会社だからこそできる素早い対応で仕事を進めてきたことは非常に大きいです」
冷たい鉄の箱ではなく、命あるものであってほしい
司会者:次に前田さん。最近、「マツダのクルマって見た目がずいぶん変わったよね」という声をよく聞きますが、マツダのデザインコンセプト「魂動デザイン」で、ここまで大きくデザインを変えるという変革に取り組んだ考えや、デザインの今についてお聞かせください。
前田氏「私がいまのポジションに就いたのが2009年。単純にカッコいいクルマを作りたいとずっと思っていました。デザインチームのトップに立たないとすべてをディレクトすることはできないので、『チャンスが来たぞ』と思いましたね」
「実は『魂動』という名前を決めるまでに1年かかりました。自分のこれまでのキャリアとやりたいことを2文字で表現しなくてはいけない。皆さんも一度、将来の自分の人生を2文字で表現してみてください。そんなに簡単にはできないと思います」
「テーマワードを見つけ出すために何度も自問自答しました。『自分は何をやりたいんだろう』『マツダってどんな会社なんだろう』と考えて導き出した答えが、やはりクルマは友達や家族、恋人みたいな存在なんだと。だから、ただの冷たい鉄の箱ではなく、命あるものであってほしい。『これだな』と思いましたね」
「私は『魂動』でデザイン、クルマ、フォルムに“命を与える”ことをテーマに取り組みました。今の時代のクルマのデザインはかなり難しいです。カテゴリー、グレード、価格など色々なことにうまく合わせて、その中で一番カッコいいものが作れるように仕向けてきました。それはテーマよりも“志”の部分が大きい。みんなで同じ方向に向いたことが(変革の)きっかけなんです。ちょっと話が堅いね!」
ダメなマツダの営業と決別
司会者:マツダの企業イメージ、ブランドイメージはずいぶん変わってきたのかなと思います。お客様とマツダの関係性を今後、どういう風に築いていきたいのか、どういうことを実践しているのかを皆様にご紹介できればなと思います。
毛籠氏「先ほどのZoom-Zoomという新しいブランド戦略と、新商品の発売を始めた後に、私はヨーロッパでいろんな勉強をする機会がありました。そこで気がついたことがあります。大事な価値観とは、クルマをたくさん売るか売らないかではないんですね。ブランドの価値が高いか低いかなのだろうと思いました」
「では、日本においてマツダはどんなイメージだったのか。『値引きのマツダ』です。デザインや開発チームからすると、自分たちが神経を注いで作ったクルマが値引きして売られることは、耐えられないと思うんです。こんなダメなマツダの営業とは絶対に決別しないといけないと思いました。そのときに勇気付けられたのは、ロードスターの存在です。ロードスターは1989年に発売して今年で26年。その間、世界中で90万台以上売れています。売れていると言いましたが、正確に言うとお客様に選ばれたということです」
「我々に営業力があったから売れたのではなくて、お客様がそのクルマを見つけて、好きになって選んでくださったから、26年間もベストセラーでいられるわけです。我々はクルマやサービスを通じて『走る歓び』を提供することに考え方を変えたんですね。我々はお客様があっての小さなブランドだし、本当にマツダにしかできない領域の価値をきちんと提供して、買っていただいた後も選ばれ続ける、そういうお客様とのお付き合いができるように、いま現場の改革に取り組んでいるところです」
「我々は小さい会社なので、よそと違う強みを使わないといけないんです。開発者が考えている志やスピリットをできるだけお客様に生で伝えられるように、販売部員をトレーニングしています。お客様の笑顔を見るともっと頑張ろうという気持ちになるので、これからもブレることなく着実に進めていきたいと思います。過去の“悪行”は反省して、きちんと心を入れ替えて頑張ります」
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