タカタ、部品供給滞れば自動車メーカーも苦境に ホンダなど救済も現実味

 
米当局からの制裁金について会見で話すタカタの高田重久会長兼社長=4日、東京都港区

 自動車部品大手のタカタは4日、欠陥エアバッグのリコール(回収・無償修理)に関する報告遅れなどで、米道路交通安全局(NHTSA)に最大2億ドル(約242億円)の民事制裁金を支払うことで合意したと発表した。1社に科す罰金としては過去最高額。ただ、これで決着とはいかず、タカタには今後もリコール関連費用や訴訟費用などが経営に重くのしかかる。また、ホンダがタカタ製エアバッグ部品の調達中止を表明。自動車メーカーの“タカタ離れ”が進めば、打撃は計り知れない。

 経営危機リスク否定

 タカタはNHTSAへの支払いが確定した7000万ドル(約85億円)を2015年4~9月期に特別損失として計上。残り1億3000万ドルは合意に違反した場合などに科される。合意はしたが、フォックス米運輸長官は「何年間も欠陥を認めることを拒否してきた」とタカタを厳しく批判した。

 高田重久会長兼社長は4日開いた記者会見で「消費者や自動車メーカーに大変ご迷惑をおかけしていることをおわびする」と陳謝。一方で「経営へのインパクトはあるが現在、資金繰りのリスクにはいたっていない」と経営危機の懸念を打ち消し、自らの引責辞任も否定した。

 だが、市場は先行きに厳しい視線を送る。この日の東京株式市場でタカタ株は急落。終値は2日終値比184円安の1189円で下落率は13%を超えた。

 不安の背景にあるのは、制裁金に加え、リコール関連費用が膨らむ恐れがあることだ。

 メーカーの自主的な回収を含めリコール対象車が世界で約5000万台ともされる中、タカタがこれまで費用計上したのは約1000万台分の約800億円。残りの車両については自動車メーカーが負担している。

 メーカー側は、原因究明がなされた段階で「お互いの責任割合を決める話し合いをして求償する」(ホンダ幹部)方針。費用は全体で数千億円規模になる可能性もあり、タカタが「債務超過に陥るケースも否定できない」(証券アナリスト)。

 さらに、米国ではタカタに対する集団訴訟も起きており、多額の罰金や和解金の支払いを迫られる恐れもある。

 ホンダがタカタ製のガス発生装置の使用中止を表明した衝撃も大きい。タカタにとって、ホンダ向け取引はエアバッグ以外も含めると売上高の1割以上を占める。他メーカーで同様の動きが広がる可能性もある。

 タカタは他社製のガス発生装置を使ったエアバッグの供給や問題となったガス発生剤「硝酸アンモニウム」の使用を中止する方針を打ち出したが、ガス発生装置はエアバッグの利益の大半を占めるとされ、利益率悪化やコスト増も想定される。

 消費者の信頼失墜も

 深刻なのは、問題の長期化や不十分な対応で消費者の信頼を失いかねないことだ。「リコールの対象になっていないものは安全だ」(幹部)として、流通する車両に搭載された硝酸アンモニウムを使ったガス発生装置の交換を行わず、消費者の不安を払拭できるかは不透明だ。

 タカタは隠蔽や改竄(かいざん)を否定するが、ホンダはタカタが行ったエアバッグに関する情報提供に不適切なものがあったことも明らかにした。

 業界でエアバッグなど安全装備を手がける部品メーカーは限られており「タカタが経営危機になり、部品供給が滞れば自動車メーカーも苦しくなる」(メーカー幹部)。このため1.2%を出資するホンダなどによる救済も現実味を帯び始めている。