日産の国内販売は復活するのか? 昔を知る人間にとっては寂しい状況

提供:PRESIDENT Online
西川廣人CCO(左)、Pepper、星野朝子専務執行役員(右)

 4位に低迷する日産の国内販売

 「技術の日産が、人生を面白くする」

 日産自動車は10月20日、横浜市の本社で国内事業についての記者会見を開き、担当の星野朝子専務執行役員はこのキャッチフレーズを掲げ、「2位を目標にすると面白くない。絞ったセグメントで1位になる」と強調した。

 日産の国内販売は現在、新型モデルの投入が乏しいため、低迷していると言っていい。1~9月の販売台数を見ても、前年同期比13.4%減の47万台で、シェアも12%とトヨタ、スズキ、ホンダに次ぐ4位となっている。昔を知る人間にとっては、寂しい状況だ。

 同社が進めているゼロエミッション政策についても、柱の電気自動車(EV)「リーフ」がEVでナンバーワンであるものの、思うように販売を伸ばせていない。2011年6月に中期経営計画「日産パワー88」を発表した時、17年3月期までに世界市場で累計150万台を販売する計画を立てていた。しかし、現在は25万台で、目標の150万台は遙か彼方だ。

 こうした日産の状況について、西川廣人CCOは次のように弁解する。

 「われわれは明確な2番手になると申し上げておきながら、現在4番手、5番手をウロウロしている。2番手から5番手までは団子状態で、その中からなかなか抜け出せない。マーケティングの努力の積み重ねが不足していた。軽自動車は戦略的に入っていったので、マーケットを獲っているが、その他については、守りは強いが攻めが弱いということがポイントだったと認識している。もう少し攻めの姿勢が必要だ」

 ロボットの力を借りて販売店強化

 その適任者に抜擢されたのが星野専務だ。星野専務は今年4月1日付で常務執行役員から国内営業担当の専務執行役員に昇格、「日産自動車のシークレット・ウェポン(秘密兵器)」(カルロス・ゴーン社長)だそうだ。02年に市場調査の会社役員から、評判を耳にしたゴーン社長に直々に請われて転職した。

 星野専務がまず取り組むのが、販売店の戦力強化だ。具体的には、国内販売店の約8割にあたる1700店舗の改装を16年度上期までに完了させ、顧客が店舗に入りやすい環境やクルマに触れやすい環境を整える。

 そして、店頭で日産がウリにする電動化、知能化技術の体感試乗会を実施、さらには電動化、知能化を軸にしたマーケティング活動も展開していくという。もちろん、販売店員の教育にも取り組み、「おもてなし」をテーマにしたトレーニングの強化も行うそうだ。

 また、ロボットの力も借りる。ソフトバンクの人型ロボット「Pepper」を11月中旬から販売店に導入する。まず女性顧客への対応を重視している「レディー・ファーストショップ」のうちの100店から始める。星野専務によれば、日産の販売店専用のアプリを搭載し、子ども向けのなぞなぞやダンスなどができるようにするという。

 確かにこうした取り組みは、販売台数を伸ばすために大事かもしれない。しかし、日産は“商社”ではなく“メーカー”だ。まずは魅力的で運転してみたくなるクルマを投入することが重要だろう。そうすれば、そのクルマを目当てにお客がやってくるに違いない。

 (ジャーナリスト 山田清志=文)