韓国の現代自、高級車もパクリ路線? レクサスやベンツに挑戦状も、海外メディアは…

 
現代自動車の高級車ブランド「ジェネシス」のフラッグシップモデル「G90」

 韓国の現代自動車が先月4日に、高級車ブランド「ジェネシス」の立ち上げを発表した。写真撮影が禁止された10日のイベントでは、フラッグシップモデルとなる「G90」を世界初公開。ライバルとは「一線を画す」と仕上がりに自信をみせるが、他社のクルマを連想させるデザインに欧米メディアがさっそく食い付くなど、発売前からいろいろと注目を集めている。ラグジュアリーカー市場は、歴史のあるドイツ勢や日本メーカーがひしめく群雄割拠の世界。現代自は“超激戦区”で存在感を示すことができるのか-。

 ターゲットは洞察力のあるユーザー

 世界の高級車市場に新ブランドで挑戦する現代自が、今回の発表会で強調したのが「新時代のラグジュアリー」だ。同社のヤン・ウンチョル副会長はジェネシスについて「技術革新、最高の走行性能とラグジュアリーをお客様に提供する」とコメント。精巧でバランスに優れたパフォーマンス、優美でスポーティーなデザイン、ユーザーに寄り添った“人間中心設計”を武器に、「顧客のニーズを意識して不要なものを省くことで、オーナーが本当に求めている完璧なクルマができあがる」とコンセプトを語った。

 ターゲットは「洞察力のある新世代の高級車ユーザー」だ。ラインアップについては、2020年までに6モデルを投入すると明言。今回、その第1弾としてプレビューを行ったG90(韓国名「EQ900」)は、同社の現行ラインアップの最上級モデル「エクウス」の実質の後継車となる。

 ライバルとの差別化に自信

 ヤン副会長は「ジェネシスはユーザーの価値観を中心に据えて開発している。ブランド名を誇示するために、不要な技術を詰め込みすぎた既存の高級車メーカーとは一線を画す」と差別化に自信をみせる。

 複数の韓国メディアは、G90の内装にイタリア製の高級レザーやオーストリアの縫製技術、有名フランスメーカーのシートを採用していることを紹介。朝鮮日報(電子版)は、ヤン副会長の「G90はベンツのSシリーズ、BMWの7シリーズやトヨタのレクサスと競合する」とのコメントを伝えるなど、韓国初の高級車ブランドの誕生に盛り上がりをみせた。

 エンジンはエクウスが搭載する5リッターや3.8リッターに加え、3.3リットルV6ターボも導入。今月上旬に韓国や中国、北米や中東で販売を開始し、その後ヨーロッパやアジアでも展開する。

 欧米メディアもジェネシスに期待

 欧米メディアもジェネシスに期待を寄せる。米紙デイリーニューズ(電子版)はG90について「洗練されたデザインと先進技術を詰め込んださまざまな機能が特徴的。新ブランドの発足に相応しいモデルだ。ジャガーやメルセデス、アウディを連想させるデザインは無視できないが、現代自はこれまでも他社のデザインを巧みに取り入れてきたし、購入者のほとんどがそんなことは気にしない」と好意的に伝えた。

 米自動車情報サイトのオートブログは「ヘッドランプはアウディ、リアはメルセデス、車室の骨格はベントレーに似ている」と部位ごとに類似点を指摘。ちなみに現代自は来年半ばに、アウディやベントレーなどのデザインを担当したルク・ドンカーヴォルケ氏をジェネシスのデザイン部門に迎え入れると発表している。

 米紙USAトゥデイ(電子版)は、「エクウスは米国でヒットしなかった。現代自は、G90がレクサスやメルセデス、BMWといった高級ブランドに対抗できることを切に願っていることだろう」と海外の高級車市場で成功する難しさを指摘した。

 過去の失敗を生かせるか

 米情報サイト、チートシートの自動車ジャーナリストは「レクサス、インフィニティ、アキュラの3ブランドは、日本勢が世界の高級車市場で戦えることを証明した。逆にエクウスは苦戦を強いられた。見た目が冴えないこともあるが、最大の要因は、高級車のユーザーたちが現代自動車に乗っている姿を見られたくないからだ」とバッサリ。「G90は前方から後方にかけてアウディ、BMW、メルセデスに見える」と独自性を欠くデザインにも苦言を呈した。

 「レクサスが26年前に北米展開を始めたときに『LS400』が認められた理由は、単純にライバルより素晴らしいクルマを作ったからだ。BMW7シリーズより速く、ジャガーXJより高品質で、メルセデスSクラスの技術をしのいだ。そしてこの3台よりも安かった。ジェネシスがプレミアムブランドになれるかどうかは、現代自が過去の失敗から何を生かせるかにかかってくる」

 今後、現代自の参入で海外のラグジュアリーカー市場に変化はあるのか。もちろん、本当の実力が試されるのはこれからだ。ジェネシスの完成度は実際に走ってみないと計ることはできない。以前、初代エクウスに乗ったことがあるが、広々とした大きな車体は貫禄があり、大邱(テグ)の街中でちょっとしたセレブ気分を味わえた。現代自は『プレミアム』の舞台で通用するのか-。G90の走りが世界中の自動車ファンから“いろんな意味”で高い関心を集めることは間違いなさそうだ。(SankeiBiz編集部)