パナソニックが東芝事業に無関心 三洋電機で難しさ経験…脱家電まっしぐら

 
記者会見で米ハスマン社を買収すると発表したパナソニックの津賀一宏社長=昨年12月21日、大阪府門真市

 パナソニックが昨年末、業務用冷蔵ショーケースを手掛ける米ハスマン社を約1850億円で買収すると発表した。創業100年にあたる平成30年度の目標として掲げる連結売上高10兆円に向けた戦略投資の一環で、家電など消費者向けの事業と比べ安定した収益が見込めるBtoB(企業間取引)事業を拡大するのが狙いだ。旧三洋電機から引き継いだ事業と合わせると、業務用冷蔵ショーケース分野で世界シェア1位に躍り出る。BtoB分野での大規模な買収劇はグローバル化と「脱家電」を印象付けている。(橋本亮)

 成長への試金石に

 「ハスマンの買収は売上高10兆円に向けた成長を実現するための試金石で、当社のグローバル経営を加速させる引き金にしたい」

 昨年12月21日、大阪府門真市の本社で記者会見した津賀一宏社長はハスマン買収の意義について、こう説明した。

 パナソニックは売上高10兆円の目標達成に向け、27年度からの4年間で計1兆円の戦略投資を計画している。ハスマン買収にそのうち5分の1近くの資金をつぎ込んだこともからも、期待の大きさがうかがえる。

 ハスマンは1906年設立で、2014年の売上高は約1300億円。最大市場である米国を中心に、主にスーパー向けに冷蔵ショーケースなどを製造・販売し、米市場ではトップクラスのシェアを持つ。

 一方、買収した三洋電機からこの分野の事業を受け継いだパナソニックは日本や中国、マレーシアでそれぞれトップシェアを占めている。北米や中南米で強固な事業基盤を抱えるハスマンを傘下に加えることにより、販路を世界的な規模に広げることができるのだ。

 さらに、ハスマンは現在ショーケースの製造・販売しかしておらず、パナソニックはハスマンの販売網と自社の商材を組み合わせることにより、ショーケースとともに、店舗の照明や空調などの販売増につなげられるとみている。会見に同席した本間哲朗常務は「ハスマンのラインアップを一緒に強くする中で、業界をリードする」と強調した。

 金額以上の価値

 パナソニックは平成24年6月の津賀社長の就任後、事業の重心を消費者向けからBtoBに移している。全体の売上高は7兆円台で推移。家電事業は約2兆円の売り上げを維持するが、競争激化もあって大きな伸びは見込めない。売上高を10兆円に伸ばすにはBtoB事業の拡大が不可欠とはいえ、買収するハスマンの年間売上高は約1300億円。その分の上乗せがあっても、目標達成へのハードルはまだまだ高いのが現状だ。

 津賀社長は「ハスマンの買収は単純に売り上げを追うためではない」と断言。その上で「BtoB事業の強化を明確にするうえで重要な位置づけとなり、金額規模を超えた価値がある」と話す。

 買収後のハスマンは37あるパナソニックの事業部の1つとなり、現在の経営陣は留任する。海外に本拠を置く事業部としてはアビオニクス(航空機向け事業)に次いで2つ目となる。

 「ハスマンは当社のグローバル経営に示唆や支援を与えてくれる。グローバル人材の確保や育成などが期待できる」と津賀社長は言う。つまり、買収したハスマンを、グルーバル経営を加速させる土台にするという考えだ。

 東芝事業に関心なし

 会見では、BtoB事業強化に向けたハスマン買収の意義を強調した津賀社長だが、質問が東芝が進める家電やパソコン事業の再編に及ぶと「(事業の買収などに)関心があるかと言われれば『ない』」と素っ気なく答えた。

 理由について、津賀社長は「家電やパソコン事業では過去にさまざまな苦しみがあったが、自分たちの中で成長していくという路線が描けている。三洋電機の買収を経て、事業の再編が難しいこともすでに経験している」と指摘した。

 何より、パナソニックにとって、韓国、中国メーカーなどとの激しい競争にさらされている家電やパソコン事業をむやみに拡大する意味はない。27年度にテレビ事業が8年ぶりに黒字化する見通しだが、黒字を維持するのは容易ではない。

 家電など消費者向け事業は単価の下落が激しく、商品サイクルも短いため、BtoB事業に比べて安定的な収益を確保するのは難しい。歴史的に消費者向けのビジネスが強いパナソニックも例外ではないのだ。過去の中期経営計画でも10兆円の売上高を目標に掲げながら未達に終わったのも、それが要因となっている。

 1800億円超もの資金を投じたハスマン買収は、売上高10兆円達成のカギを握るBtoB事業の拡大の象徴であると同時に、「脱家電」路線をより明確にしたともいえるのだ。