シャープ再建案、自前至上主義から脱却する好機 日本の電機産業に時代の波

 
大阪市のシャープ本社(前川純一郎撮影)

 シャープが台湾の鴻海精密工業による再建案を最終的に選べば、日本の電機大手が外資に買収される初めてのケースになるとみられる。再建の成否は、日本企業が外資によるM&A(合併・買収)を積極的に受け入れる契機となるかどうかを分けそうだ。国内家電産業の衰退を示すと同時に、“買い手”が家電のデジタル化で台頭した電子機器受託生産会社(EMS)であることも、時代の変化を映している。

 日本の基幹産業とされる電機だが、ここ数年は韓国や中国のメーカーとの競争で劣勢にまわるケースが多い。業績が悪化した企業は事業再編に乗り出したが、ソニーなど3社の液晶事業を統合して生まれ、産業革新機構が出資したジャパンディスプレイのように日本企業同士でまとまるケースが多い。パナソニックに買収された三洋電機の白物家電事業は、中国のハイアールの傘下に入ったが、シャープ本体が買収されれば異例だ。

 日本の電機大手は海外企業の買収には積極的だが、“買われる”立場への抵抗は強い。早大商学学術院の長内厚准教授は「自前技術至上主義から脱却する好機だ。相手がアジア企業だと日本企業は技術流出に漠然とした不安感を抱くが、鴻海とシャープの話がうまくいけば払拭できる」と指摘する。

 革新機構と、機構を所管する経済産業省はシャープが保有する技術の流出を懸念しているが、4日の会見でシャープの高橋興三社長は鴻海と共同運営する堺工場(大阪府)について「技術流出はなかった」と強調した。革新機構はシャープの液晶事業をジャパンディスプレイと統合する意向だが、金融関係者は「一つの会社になればリストラにつながる。辞めた人が中国に行くかもしれない」と機構案が逆に技術流出につながる可能性を指摘する。

 好条件の鴻海案をけり、政府の意向を踏まえた機構案を選べば海外投資家から日本が「閉鎖的な市場」とみられる懸念もある。