日産やトヨタなど、英国のEU離脱を懸念 生産拠点に新たなリスク

 
日産自動車の英サンダーランド工場。2015年1月にはチャールズ皇太子(左)が視察に訪れた

 英国の欧州連合(EU)からの離脱について、現地に生産拠点を置く日系自動車メーカーから懸念する声が相次いでいる。6月に離脱の賛否を問う国民投票が行われるが、離脱すれば関税や物流コストなどの増加で影響を与えかねない。欧州の新車販売は好調を維持しているが、新たなリスクになりつつある。

 「英国がEUに残ることが雇用、貿易やコストの観点から理にかなっている」

 日産自動車のカルロス・ゴーン社長は2月下旬、国民投票についての声明を発表した。

 英東北部にあるサンダーランド工場は欧州の主力拠点で、スポーツ用多目的車「ジューク」や電気自動車「リーフ」などを生産。昨年は約48万台を生産、うち8割を他のEU加盟国などに輸出した。

 トヨタ自動車も英国で小型車などを生産。昨年は約19万台を生産し、欧州や日本などに輸出した。英国がEUを離脱すれば「開放された欧州市場へのアクセスの縮小により、英国事業の競争力の課題になる可能性がある」と指摘する。

 輸出入の際の関税や税関などの手続きの煩雑化、物流コストの上昇が予想されるほか、車の安全や環境などに関する規制や認証も他のEU諸国と統一されなくなる可能性がある。

 英国で昨年約12万台を生産したホンダも「離脱すればどういう影響が出るか不透明だ」と打ち明ける。

 欧米メーカーも懸念を示しており、英国に製造拠点を持つ自動車メーカーや部品会社で組織する英自動車工業会(SMMT)は3日、記者会見を開き、英国がEUを離脱すれば、生産コストの上昇は避けられないとして残留を要請した。

 SMMTが会員企業を対象に実施した調査では、77%が「英国はEUにとどまった方がよい」と回答。離脱すれば英自動車産業の80万人の雇用が、危機にさらされることになるという。