スギホールディングス株式会社

健康づくりは幸せづくり
杉浦広一会長

 ■愛知から地域医療対応型ドラッグストアを全国へ

 愛知県西尾市で創業し、地域の“かかりつけ薬局”としての役割を追求しつづけているスギホールディングス。薬局としての専門性を磨き、超高齢社会に対応した在宅医療のサポートなど、時代とともに変わるニーズに柔軟に対応することで地域での信頼を積み重ねてきた。創業から40年で、ひとつの小さな薬局から1000店舗に達する規模にまで拡大させた杉浦広一会長に、創業の精神や今後の展望について話を聞いた。

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 □杉浦広一会長

 ■地域包括ケアシステムを具現化する旗艦店を

 --創業の経緯や、当時どんな思いで薬局を始められたのかお聞かせください

 「岐阜薬科大の後輩である妻とともに、薬剤師の専門性を生かし、どのように地域社会に貢献できるのかと考え、愛知県西尾市に小さな薬局を開設しました。創業当初は1日の客数十人、売り上げ1万円程度と厳しい状況もありましたが、安売りを訴求しての集客は考えず、“目の前のたったひとりのお客さま、患者さまを大切に”という思いで働いてきました。軌道に乗るのに10年以上を要しましたが、今年で40周年を迎え、1000店舗にまで成長させることができました」

 --地域医療対応型ドラッグストアとして、どのような役割を果たしたいとお考えでしょうか

 「超高齢社会となった今、健康寿命の延伸が大きな課題です。そのためには、『予防』『未病』への対応が肝心で、当社では薬剤師、管理栄養士が日常生活でのアドバイス、症状の改善に向けた対処から、必要に応じて受診勧奨まで、生活エリアにおける医療の最初の入り口としての機能を果たすことを目指しています。また在宅医療においては、当社薬剤師が多職種連携のハブとなる役割を果たしていくべきと考えています」

 --調剤の特徴的な面や、最近の新たな動きを教えてください

 「当社最大の強みである調剤部門シェアは全体の20%を占めています。調剤は前年比で18~20%の伸長を続けており、高単価のC型肝炎治療薬もこれに寄与しています。診療報酬改定では、大型病院の処方箋を主として扱う“門前薬局”にとって厳しく、当社が取り組んできた、地域の多種多様な医療機関からの処方箋を広く受け付ける“面分業”に追い風となる見直しです。経営難となった薬局の処方箋は調剤併設ドラッグストアに回るとみています。2020年度の中期計画では1500店舗、総売り上げ5000億円を目指していますが、そのうち、調剤売り上げはシェア30%、売り上げ1500億円と伸長させる見込みです」

 --在宅医療も手がけていらっしゃいますね

 「在宅医療実施店舗は、1月末時点で310店舗になり、訪問服薬管理指導と居宅療養管理指導を行っています。具体的には、薬剤服用歴の管理や副作用のチェック、重複投与の防止、服用コンプライアンスのための一包化、お薬カレンダーセット、残薬の管理、医師、ケアマネ、訪問看護師との情報連携などです。一部では、ご要望に応じて生活用品の配達もしています」

 --「スギメディカル」として訪問看護事業と居宅介護支援事業を展開されていますが、事業の具体的な概要と目指す役割について教えてください

 「病院完結型医療から地域完結型医療へと改革が進み、『地域包括ケアシステム』の早期構築が重要な課題です。スギメディカルは地域医療機関と介護事業者との連携を強化し、在宅医療をチームでサポートしています。地域の方々がずっと住み慣れた町でいきいきと暮らせるように、利用者・ご家族の視点に立って看護をしています。現在、関東4、中部2、関西4の計10拠点を展開しています」

 --今後どのような薬局を目指していかれるのか、展望をお聞かせください

 「創業時からブレない理念のもと、目指すのは全店が“かかりつけ薬局”として機能することです。在宅医療の展開拡大や、24時間対応など、今後取り組んでいくべき課題はたくさんあります。地域包括ケアシステムを具現化した店舗モデルとして旗艦店を地元・三河エリアで出店することを進めており、将来的には10店に1店を、この旗艦店モデルとしたいと考えています。薬剤師、管理栄養士というプロが十分に人員配置されており、いつでも自由にセルフチェック可能な測定機器が置かれたコミュニティースペースでは、測定からカウンセリング、健康イベントの実施など、顧客との関わりがより身近で、密接なものとなります。『健康でありたい、いつまでもキレイでいたい、住み慣れた場所で快適に安心な生活を送りたい』という地域のお客さまのニーズに応える『トータル・ヘルスケアステーション』でありたいと思っています」

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【プロフィル】杉浦広一

 すぎうら・ひろかず 1950年生まれ。岐阜薬科大学卒。76年に妻の昭子氏(同社代表取締役副社長)とともに、愛知県西尾市に16坪のスギ薬局を創業。82年株式会社化し社長に就任。2008年持株会社化、09年から現職。11年に国民の健康と地域医療・福祉への貢献、拡大を目的に「公益財団法人杉浦記念財団」を立ち上げ評議員会長に就任。

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 ■沿革=1976(昭和51)年愛知県西尾市で現会長の杉浦広一氏が妻の昭子氏とともに創業。82(昭和57)年(株)スギ薬局設立。2001(平成13)年、東証一部・名証一部に上場。08(平成20)年に持株会社化、「スギホールディングス株式会社」に商号変更。

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 ■会社現況

 創業時から「地域のお客さまの健康と美容に貢献する」という理念のもと、地域医療対応型ドラッグストアを展開する『スギ薬局』、ディスカウントドラッグストアとして価格訴求を販売の軸とする『ジャパン』に加え、地域医療連携を推進する『スギメディカル』の3つを柱に展開。2020(平成32)年度の中期計画では1500店舗、総売り上げ5000億円を目指す。

 ◇資本金=154億3400万円(2015年2月末現在)

 ◇連結売上高=3836億円(2015年2月期)

 ◇連結従業員数=4145人(2015年2月末現在)

 ◇本社=愛知県安城市三河安城町1-8-4