ファンケル化粧品「ファンケル メン」(2-2)

開発物語
きめ細かくクリーミーなフェイスウォッシュの泡は、ひげそりにも使える

 ■化粧品に対する性差乗り越え

 ≪TEAM≫

 「ファンケル メン」の開発に当たり、チームのメンバーがぶつかった壁は化粧品に対する性差だった。

 ファンケル化粧品の男性向け化粧品は、1999年発売の「無添加メンズケア ジーナス」までさかのぼる。毎日のスキンケアを男性の習慣にしてもらおうと考え、シェーバー用ローションをラインアップに加えた。2007年には美容液を追加し、美肌効果を前面に出した。12年の刷新では、皮脂バランスを整え、滑らかな肌に導くコンセプトを打ち出した。

 商品企画第一グループの佐々木秀明さんは最初の頃、男性化粧品を開発する上での難しさを感じていた。佐々木さんは「男性はそもそも化粧品を使ったことがなく、自分にとって何が良いものかの基準がない」と考えたという。

 そこで、社内の男性社員に自社、他社を問わずさまざまな化粧品を試してもらい、感想を商品開発に吸い上げていった。その中で、佐々木さんは「メントールやアルコールの入った男性化粧品が嫌で、女性向け化粧品を使っている人もいる」と気付いた。しかし、女性向け化粧品は女性の肌に合ったもので、男性には向かない。「それなら、女性向け化粧品の良い部分をピックアップして男性向けを作ればいいのでは」という考えに至った。

 フェイスウォッシュ(洗顔料)を担当した洗浄剤開発グループの三譯(みわけ)秀樹さんは、2つのイメージを表現した試作品を作り、それを企画部門の女性上司らを含めた社内会議で最終的に決めることになった。男性陣と女性陣で意見が分かれたが、女性の上司が「やはり男性の意見を尊重しよう」と話し、男性陣の意見が採用された。三譯さんは「男性が求める潤い感と、女性が求める潤い感は違うと思った」と振り返る。

 また、開発チームがこだわった「クリーミーな泡」について、「男性に気持ちよく使ってもらえる化粧品にする」(三譯さん)ことを心掛けた。

 ファンケルの化粧品の特徴は、防腐剤、香料、石油系界面活性剤など、肌に負担をかける成分を一切使用していないことだ。このため、防腐剤を入れずに品質を保ったまま使い切れるよう、少容量にしたり、特殊構造の密封容器を採用したりしている。

 ファンケルがこれまでの研究で培ってきた独自のアミノ酸系の選択洗浄成分をメーンに据えた。これは、皮脂の汚れを取ると同時に皮膚の表面を守る「細胞間脂質」を流出させない効果がある。

 ところが、この成分をメーンに使用すると、素早くクリーミーな泡ができにくいという問題があった。そこで、容器では3枚のメッシュ構造を採用したほか、中身の成分の組み合わせにもさまざまな工夫を凝らした。洗顔料から泡を手に取り、逆さにしても落ちないほどのきめ細かさを実現できた。

 開発チームが一丸となって意見を出し合い、ファンケルらしい肌への安全性と効果を追求した男性向け化粧品が完成した。

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 ≪MARKET≫

 ■男性向け市場は拡大傾向

 ファンケル化粧品が注力する男性向け化粧品市場は、今後も拡大が期待される。

 富士経済によると、2014年の市場規模は前年比3.1%増の1094億円で、15年も前年比1.9%増を見込む。ここ数年、夏場に冷感を強調した顔拭きシートに続き、30~40代を対象に臭い対策を訴求したメンズシャンプー・リンスやボディーシャンプー、エイジングケアを訴求したフェースケア商品がヒットしている。同一ブランドでメンズフェースケアやメンズボディーケア商品が追加されるなど、ラインアップの広がりもあり、市場は拡大しそうだ。

 このうち、男性向けフェースケアをみると、洗顔料や整肌料、顔拭きシート、その他ファンデーション、アイブローなどがある。ファンケルは洗顔料「ファンケル メン フェースウォッシュ」、整肌料「ファンケル メン オールインワンスキンコンディショナー」を発売したほか、5月20日に顔拭きシート「ファンケル メン フェイシャル スキンケアシート」を数量限定発売する予定だ。

 ファンケルは「エントリーユーザーである30代の取り込みを狙っていきたい」と話している。

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 ≪FROM WRITER≫

 ファンケル化粧品によると、肌ストレスの原因はさまざまだ。紫外線、乾燥、飲酒・喫煙、花粉、大気汚染などだ。特に、防腐剤や香料など化粧品に含まれる添加物は気付かない肌ストレスとなる。これらの肌ストレスにより発生したダメージに対し、ファンケルの素肌純化成分がダメージのもとを除去し、さらに美容成分が健やかな肌に作用し素肌美になる。

 素肌美を引き出すためには、肌が本来持つ自ら美しくなる力「自活力」を発揮させることだとファンケルは考える。「無添加」だからこそ、肌にストレスを与えず、ダメージを取り除き、自活力を引き出せる。

 ファンケル メンの開発に当たり、開発チームは化粧品の素材選定について、無添加にこだわって試行錯誤を繰り返した。大変な作業だったというが、だからこそ消費者の支持を得ているのだと感じた。

 「ファンケル 銀座スクエア」(東京・銀座)の3階では、無料で肌状態の相談を受けている。私も取材時にマイクロスコープを使って診断してもらったところ、「肌年齢」は実年齢を3歳ほど上回っていた。今からでも遅くはないと励まされ、スキンケアの大切さを思い知らされた。

 このようなファンケルの安心を与える啓発活動が、顧客の心をつかんで離さないのだろう。(鈴木正行)

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 ≪KEY WORD≫

 ■ファンケル メン

 ファンケル化粧品が2月19日に発売した無添加の男性向け化粧品。第1弾は、洗顔料「ファンケル メン フェイスウォッシュ」(180ミリリットル入り、1512円)と、さっぱり、しっとりタイプの2種類の整肌料「ファンケル メン オールインワンスキンコンディショナー」(60ミリリットル入り、2700円)。5月20日には、汗などの拭き取りとスキンケアを同時にできる「ファンケル メン フェイシャル スキンケアシート」(22枚入り、648円)が数量限定発売される予定だ。