タカタ問題解決へ議論急げ 業界挙げ“日本車ブランド”維持を

高論卓説

 2014年以来、混迷を極めたタカタ製インフレーター(エアバッグを膨らませるガス発生装置)を原因とするエアバッグリコール問題が、その責任を誰が担い、原因を生み出したタカタの再建をいかに図るかという出口戦略を模索する段階に入ったと考えられる。しかし、この解決策は容易ではない。

 米運輸省の元長官、サミュエル・スキナーを筆頭とする第三者委員会の調査結果に続き、異常破裂の根本原因の調査を受託してきた3つのコンサルティング会社のうち、2社の調査結果が既に発表された。最後の1社も、近く結果が判明しそうだ。当事者のタカタは主要取引先の完成車メーカーとの会合を重ね始め、インフレーターの技術を有するダイセルとの事業提携の検討も始まっている。

 根本原因が定かとなり、交換対象インフレーターが明白となれば、残る課題は責任問題の決着と将来を見据えたタカタの再建策となる。

 根本原因は、インフレーターに用いられる硝酸アンモニウムと呼ばれる火薬が長期間湿気にさらされる設計・製造上の問題が挙げられた。これは、当初からの疑いを裏付けたものであった。硝酸アンモニウムは湿気を帯びると体積が増え爆発力が増すことはかなり前から指摘されてきたことである。そのため、「デシカント」と呼ばれる乾燥剤を加える対策が09年頃から実施されている。

 調査結果に基づけば、乾燥剤の入っていない硝酸アンモニウムインフレーターのリスクが認識され、対策が打ち出される可能性が高そうだ。米運輸省道路交通安全局(NHTSA)と国土交通省の判断が注目される。

 硝酸アンモニウムを用いるエアバッグの総セット数はざっと2億台あると推計され、その内、乾燥剤なしが1億1500万個、乾燥剤付きが8500万個とわれわれは分析している。乾燥剤なしのうち、既に約6300万個がリコール済みと推定される。

 原因が不明だったため、これまで“予防的”に実施してきたリコールに自動車会社が立て替えてきた費用は6000億円にも及ぶとみられる。残りの乾燥剤なしが安全を目的に交換されると仮定すれば、費用の総額は1兆円に達する計算だ。

 この試算が正しいのなら、これはタカタ1社で到底解決できる問題の規模ではない。消費者の安心を確立し、日本車の安定的な生産活動を守りつつ、「安全」と「安心」のブランドを維持するためには、業界を上げて解決策を見いださなければならない大問題だ。タカタは説明責任を真摯(しんし)に果たさなければならない。影響が大きいホンダとトヨタ自動車には、問題解決へのリーダーシップが問われるだろう。原因究明が進めば、建設的な解決策を早期に見いだすことが大切だ。

 乾燥剤付きの硝酸アンモニウムインフレーターについても、将来のリスクをどのようにコントロールするのかという難題も残っている。湿気を帯びなければ差し当たってのリスクは低くそうだと考えられるものの、経年後や予期しない設計・製造上の問題が起こってしまったとき、将来に大きな禍根を残すことにもなりかねない。インフレーターそのものの製品寿命に対しても、問題を先送ることなく、議論を急ぐべきではないだろうか。

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【プロフィル】中西孝樹

 なかにし・たかき ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト 米オレゴン大卒。山一証券、JPモルガン証券などを経て、2013年にナカニシ自動車産業リサーチを設立し代表就任(現職)。著書に「トヨタ対VW」など。