柱梁作業省力化と高耐震性 大林組

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大林組が開発した現場上向きロボット溶接工法(同社提供)

 ■現場上向きロボット溶接工法

 高齢化や若年層の入職率低下に伴う技能者不足が懸念される中、大林組の「現場上向きロボット溶接工法」は、鉄骨造り建物の柱と梁(はり)の溶接作業の省力化と高い耐震性を実現した。

 鉄骨造り建物の柱梁接合部の溶接は、柱と梁を建設現場で接合する「現場溶接型」と、鉄骨加工工場であらかじめ柱に梁の一部(ブラケット)を溶接しておく「工場溶接型」がある。

 現場溶接型には「上向き」と、「下向き」があり、工場溶接型に比べて材料や製作、輸送コストを抑えられるメリットがある。

 上向き溶接は高度な技術が必要なことから、現場では下向き溶接の採用が主流だった。

 しかし、下向き溶接の場合、作業時にスカラップ(穴)を設ける必要があり、地震時に穴から亀裂が発生しやすいと指摘されていた。

 そこで、大林組は溶接ロボットを上向き作業用に改良。作業時に溶接用の金属がしたたり落ちないよう、粘着力のある素材を採用した。

 新工法が開発された結果、穴を設けずに溶接が可能となり、亀裂の発生を抑えて従来の現場溶接型に比べて約2倍の耐震性を実現した。1人のオペレーターが複数のロボットを操作すれば、技能者以上の溶接作業量をこなすこともできる。ロボットによる溶接は、見栄えが良く高品質の接合部となる。

 新工法は、建物改修工事において、上向き溶接の方がコストや作業効率の点で有利な現場での採用が見込まれる。

 大林組は、既に埼玉県と大阪府にある計2カ所の自社の事務所棟建設で新工法を採用。今年秋にも、東京都内の建設現場で新工法を本格導入する予定だ。

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