世界に響く“メード・イン・ジャパン” 日本人が思う以上に海外で高い評価
洋楽器の世界でメード・イン・ジャパンの評価が高まっている。設計や製造工程の細かな違いが音に影響するが、日本メーカーの高い技術力が高品質につながっている。世界のオーケストラで採用されたり、国際的なピアノコンクールで出場者に選ばれたりするケースが増えている。欧米製品のコピー、安モノといった従来イメージが世界で変わりつつあるという。(栗井裕美子)
存在感と安心感
「思う通りの音が出せるね」
ピアノメーカーの国内最大手、ヤマハの大阪市西区のショールーム。同社製のコンサート用グランドピアノ、CFX(シー・エフ・エックス)を試弾した小中学生は笑顔で語った。
同社製のピアノは「個性がない」とも揶揄(やゆ)されがちだったが、CFXは「歌うピアノ」を目指して開発された。音色の決め手となる響板や弦を打つハンマーの設計を改良し、存在感ある華やかな音色と繊細な表現を可能にした。
世界の一流ピアニストから「豊かな余韻と重厚な響き」が高い評価を受け、大阪市のザ・シンフォニーホールやオーストラリア・シドニーのオペラハウスなど国内外のホールで使用されている。
CFXは昨秋、ポーランドで開かれた世界最高峰の「第17回ショパン国際ピアノ・コンクール」では“快挙”を成し遂げた。
同コンクールでは、指定されたメーカー4社から出場者が使用するピアノを選ぶ仕組み。ヤマハによると最終審査となる本選では出場者10人のうち5人が使用し、国際コンクールで標準ともいわれた絶対王者、スタインウェイ・アンド・サンズ(米国)製と人気を二分したという。
ヤマハは「ピアニストが人生をかけるコンクールで使われるのはありがたい。選ばれるには安心感が大切で、後発メーカーとしては常にいいものを作る挑戦を続けなければいけない」と語る。
コピーから出発
日本の洋楽器づくりは、幕末に洋楽がもたらされたことに始まり、明治政府の欧化政策で発展した。手先の器用な日本の職人らが輸入楽器をコピーして生産したのが原点だ。
ピアノは、木や金属の部品など約8千点で構成されており、生産技術の習得は一筋縄ではいかない。このため日本製のピアノは世界的には「安くて粗悪」という評判に甘んじていた。
前身の日本楽器製造時代の明治33年にピアノ生産に本格的に乗り出したヤマハも外国人技師を招いたり、職人の養成所を設立して生産技術の向上に努力。世界的に長く定着していた日本製の楽器のイメージ脱却を目指してきた。
ピアノ以外も人気
メード・イン・ジャパンの品質が評価されている洋楽器はピアノにとどまらない。
村松フルート製作所(埼玉県所沢市)は、精巧な作りによる安定した品質で世界の音楽業界で知られている。国内外の多くの演奏者が愛用しており、「世界のMURAMATSU(ムラマツ)」と呼ばれている。
大正12年にフルートの製作を始めた同社は、国内外の演奏家のアドバイスを受けながら改良を重ねた。
今では同社で修業した職人が独立するなどして国内にメーカー十数社が存在しており、日本は世界でも有数のフルート生産国なのだという。創業者の孫にあたる村松明夫社長は「よい楽器を作り続ける責任を感じている」と話す。
軽音楽用の楽器も日本製品の台頭が著しい。アコースティックギター(アコギ)はもともと米国メーカーが人気だったが、ここ十数年は世界的に、ヤマハなど国内の数社が高い品質を武器にシェアを伸ばしているという。
海外メーカーの多くが他社に生産を委託しているのに対し、日本のメーカーは自社で全工程を手掛けることにこだわり、丁寧に仕上げられた外観の美しさや湿度などに左右されない安定した音などが特徴だ。
楽器販売会社、JEUGIA(ジュージヤ)三条本店(京都市中京区)では、約3万~120万円のアコギを販売。日本メーカーの製品が外国人観光客に人気だといい、高価格帯が売れているという。
同店の担当者は「日本人は細部にこだわることにたけており、使い手への配慮も優れている。日本人が思う以上に国産楽器への海外の評価は高いと思う」と説明している。
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