交渉難航…シャープ社内に疲弊感 鴻海と締結遅れ1カ月「商売が止まる恐れも」

 

 台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業が経営再建中のシャープを買収する契約の締結が、当初予定よりも1カ月近く遅れている。鴻海がシャープの業績見通しに懸念を抱き、主力取引銀行に追加的な金融支援を求めているためだ。交渉は難航しているもようで、関係者の間には疲弊感も漂う。

 「早くしないと、商売が止まる恐れもある。普通はすぐに契約するものだ」。17日、シャープ幹部の一人は不安げに話した。

 関係者によると、シャープの取引先の一部は鴻海の傘下入りを前提に取引に臨んでいる。交渉が長引けば、部品の納品遅れや数量の制限といった事態を招きかねないという。

 シャープと鴻海による合意発表は当初、シャープが傘下入りを決めた翌日の2月26日に設定されていた。だがシャープが同月24日に鴻海に送った、将来顕在化する恐れのある債務「偶発債務」のリストが問題視され、契約が延期された。

 偶発債務は当初、最大で3000億円以上とされたが、鴻海による資産査定の結果、数百億円に収まる見通しとなった。

 それでも鴻海側はシャープの2016年3月期の業績見通しも不安視し、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行の主力2行に新たな支援を求めだした。

 2行による融資で今月末に返済期限を迎える計5100億円について借り換え後に金利を引き下げることや、3000億円の追加融資などの内容だ。

 さらには主力行が保有するシャープの1000億円の優先株を鴻海が買い取るという当初の約束について、値下げを求めるだけでなく、一時は買い取りを拒否する姿勢も示したという。

 主力行関係者の一人は「今、銀行は鴻海に振り回されている状態」と明かす。シャープは鴻海の他に頼る先がなく、交渉破談、法的整理となれば、主力行は巨額の損失を被る。「鴻海の要求をある程度受け入れざるを得ない」(主力行幹部)状況だ。

 今月16日、シャープの高橋興三社長と主力行の担当役員が、台湾の鴻海本社を訪れ郭台銘会長と協議したが、金融支援については結論が出なかったもようだ。

 主力行の幹部は「確約さえあれば、契約が来月にずれ込んでも問題ない。ブレーク(破談)する話ではない」と強調。融資の借り換えを先に行って契約締結を待ったり、返済期限を遅らせたりする案も浮上してきた。

 交渉の長期化で、シャープ社内には「早く安心したい。もう疲れた」(50代社員)といった声も広がる。(織田淳嗣)