「猫バンバン」って知ってる? ちょっとした思いやりで救える命

 
タイヤと車体の隙間に入り込む猫。車体の下からエンジンルームに入り込むこともある(日産自動車提供)

 ボンネットを開けたら、猫がいた!? 寒い日を中心に、車のエンジンルーム内に猫が入り込むトラブルが起きていることをご存じだろうか。温かいところに潜り込む習性のせいだが、気づかずエンジンをかけた結果、猫が大けがをしたり死に至ってしまうケースもあるという。

 悲しい事故を防ぐため、日産自動車はこの冬、インターネットなどで乗車前にボンネットをたたいて猫を退散させる「猫バンバン」を推奨。これがドライバーらの共感を呼んでいる。

 車体のすき間から

 「車から猫の鳴き声がする。何とかしてほしい」

 今年2月、日本自動車連盟(JAF)兵庫支部神戸基地(神戸市灘区)に出動要請が入った。

 現場に駆けつけた同支部ロードサービス隊の班長、山本正さん(40)がボンネットを開くと、エンジンルームには3匹の子猫。車体下部のすき間からエンジンルーム内に潜り込んだとみられる。

 「猫は助け出そうとすればするほど奥に入る。時間をおいて自然に出るのを待つのが一番」と山本さん。だが、のんびり待ってられない場合もある。「すぐに猫を出したい場合は、車の下に潜ります」

 ジャッキで車体を持ち上げて潜り込み、部品を外すなどしながらすき間から飛び出す尻尾を探し、つかんで引っ張り出すという。

 ベルト切断の恐れも

 同支部によると、同支部の隊員は85人いるが、山本さんはこの1年間で3回出動し、ほかの隊員も少なくとも1回は猫の救出に向かった経験がある。

 同市長田区では2月、車を発車させようとした30代男性が、車の下で左前足がない猫の死体を発見した。

 通報を受けた兵庫県警長田署は、人為的に切断された可能性もあるとして捜査に着手。

 すると後日、車のエンジンルーム内で干からびた前足が見つかった。断定されたわけではないが、ボンネット内に入り込んだ猫が切断された可能性が高いとみられている。

 猫だけではなく、車にも被害が出ることも考えられる。同支部によると、猫がエンジンルーム内に入ったままエンジンをかけると、ベルトが切れるなど車の故障につながる恐れがあるというのだ。

 「少しの思いやり」

 「かわいくて、たまにドジな猫たちは」「あったかいところが大好き」

 愛らしい猫の姿とともに浮かび上がるメッセージ。日産自動車が制作した「猫バンバンプロジェクト」の動画だ。動画はこの後、ボンネットに入り込んだ猫を映し、「だから乗る前にボンネットをバンバン」と呼びかけている。

 同社によると、以前から猫がボンネットに入り込むことに関する相談は寄せられていたが、昨年11月、冬が近づいたため注意喚起しようとツイッターでつぶやいたところ、反響があり、今年1月にプロジェクト化。動画やフェイスブックで情報発信を始めた。

 すると、同じ自動車メーカーの本田技研工業やフィアットもプロジェクトへの賛同を表明するなど、話題になった。動画は2月15日から1カ月で再生回数が100万回に迫る勢いだ。

 日産の担当者は「ちょっとした思いやりで救える命がある。猫が犠牲になる悲しい事故を防ぐため、1人でも多くの人に猫バンバンを知ってもらいたい」と呼びかけている。