□ホールマーケティングコンサルタント LOGOSプロジェクト上級研究員・岸本正一
■新規顧客は「意外と多く存在する」
“意図しなかった新規来店客”について。ホールによってその数も異なるが、筆者が把握している数値を踏まえても「意外と多く存在するのだな」というのが大半の感想になると思われる。では、なぜこのような“意図しなかった新規来店客”が存在するのか。
大きな理由として考えられるのは、消費者は必ずしもアンケートの回答選択肢のように明確な回答を持たずに、衝動的意思決定をするケースがあるという点。商店街を歩きながら、なんとなくその店に入って物品を購入したという経験は少なからず誰もが持っている。厳密にはショーウインドーの陳列商品や、直近の対象製品群に対する購買ニーズも考えられるが、その店で買う理由は別段なかったというケースは多い。これは、おそらくパチンコ・パチスロについても同様だ。
具体的には、「時間潰しをしたい」と思っていた人がたまたま入店してくれるというケース。あるいは、他店で最近負けが続いているプレーヤーが「気分転換」を目的に来店するケース。また、まれな例だが「初めてパチンコをする」という客の存在も確認されている。
このようなプレーヤーは商圏内を自然回遊する潜在的顧客だ。太平洋の回遊魚のように一定のエリアを泳いでいるパチンコ・パチスロプレーヤーと思っていただきたい。そして、その回遊魚の一部は大半のホールが気づかないうちに貴店にも来店している。また、回遊するということはすなわち、そのプレーヤーにとって絶対的遊技前提条件が存在せず、これまで通っていたホールに対する特別の愛着やひいき感情が薄いことを意味している。
重要なのは、このような回遊客を見つけたときにホールが何をできるかということだ。「どうせ新規客など来ない」と思い込んではならない。自然現象ともいえるプレーヤーの回遊現象は、少なからず貴店にも新規客を運び続けている。業界を取り巻く環境変化により、今後サービス業としての要素強化がもとめられるなか、このような場面に備えて普段どのような取り組みが行われているのか。遊技機市場の変化を前に、改めて確認する必要がある。
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【プロフィル】岸本正一
きしもと・しょういち 1963年生まれ。元SEの経験を生かし、遊技場の集客メカニズムを論理的に整理・研究する傍ら、全国のパチンコホールを対象にコンサルティングを行う。雑誌への連載やテキストの出版、セミナーでの講演なども手掛ける。オベーション代表。
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