損保、IT活用に注力へ 4社新トップ 事業環境急変に危機感
東京海上日動火災保険など、損害保険大手4社のトップの顔ぶれが4月1日、一斉に変わる。各社の次期社長は28日までに、フジサンケイビジネスアイのインタビューに応じ、少子高齢化や大規模な自然災害の多発など、事業環境の急速な変化に対する危機感を示した。商品・サービスの拡充や生産性向上のため、ITの活用に力を入れる戦略を打ち出した。
損害保険ジャパン日本興亜の西沢敬二氏は2020年度までの次期中期経営計画の期間に、1500億~2000億円のシステム開発投資を行う計画を明らかにした。西沢氏は「その次の中計の頭で、最低1500億円の最終利益を生み出せるようにする」と語り、商品構成も大幅に見直す考え。今年10月にも本格的な開発に着手する。
MS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下の三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険も損害サービス部門のシステム開発投資を進めている。19年に自動車保険、20年に火災保険や傷害保険で、保険金支払い期間を短縮する計画だ。
各社とも、人工知能(AI)の活用にも積極的に取り組む。東京海上日動がコールセンターでの活用を検討しているほか、三井住友海上は営業社員などからの照会に対応する専門部署への導入も検討している。
ITを活用した新しい商品・サービスへの構想も豊富だ。「工場のセンサーを活用して、爆発事故や巨大災害による被害の拡大を防ぐサービス」(東京海上日動の北沢利文氏)、「スマートハウス向けの火災保険とホームセキュリティーサービスの組み合わせ」(三井住友海上の原典之氏)などのアイデアが飛び出した。
ITの進展は今後、特に主力の自動車保険を大きく変える可能性がある。実際の走行データを活用する「テレマティクス保険」に関し、あいおいニッセイ同和の金杉恭三氏は「できれば16年度中に、専用の車載器を使って取得したビッグデータ(大量の情報)を活用した本格サービスを始めたい」と述べた。
一方、ITで得られた運転情報を保険料にどう反映させるかという問題が出てくる。「自動車保険の収支は改善したが、様子を見ながら適正な保険料水準を見極めたい」(東京海上日動の北沢氏)といった意見が目立った。(米沢文)
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