いつまで続く原油安 20年に1バレル=70ドル目指す動き
論風□日本エネルギー経済研究所常務理事・小山堅
原油価格の低迷が続いている。年初から30日までの平均値を見ると、米国産標準油種(WTI)が1バレル=33.5ドルとなっている。2011年から14年前半まで基本的に100ドル超の原油価格が続いていた時期と比べれば、7割ほど低い原油価格となっている。
14年後半から下落を始め、まず15年初めに一番底、同8月に二番底、そして本年初に三番底となり、その都度最安値を更新した。2月にはWTIで26.2ドルと、03年5月以来の安値となった。その後40ドル近辺まで値を戻しているが今後はどうなるのか。
◆サウジ、調整役を放棄
そもそも、今の原油安が続く背景には、基本的な国際石油需給の軟化がある。先進国の民間石油在庫は14年初から大幅な増加を続け、直近時点で総計30億バレル超という未曽有の高水準に達している。いわば国際石油市場は「ジャブジャブ」の状態にある。
世界の石油需要は14年の低迷期以降も着実な需要増を見せている。しかし、問題はそれを上回る石油供給拡大が続いていることだ。100ドル超の原油価格は水平掘削や水圧破砕などの先進技術の普及拡大の下で、米シェールオイル生産の大幅拡大を可能とした。
米国の石油生産は14年までの3年間で日量約400万バレルも増加、米国を世界最大の産油国の地位に押し上げた。米国に牽引(けんいん)され非石油輸出国機構(OPEC)の石油生産が世界の石油需要増加を上回るペースで増加する中、OPEC、中でもその盟主サウジアラビアは価格防衛のための減産はせず、市場シェアを重視し日量1000万バレル超の高い生産を続けた。1980年代前半に単独で「スイングプロデューサー(需給調整)」役を担った結果、高コスト石油生産者を利する一方で自らのシェア激減という苦い経験を持つサウジは今回はその轍(てつ)を踏まないとの意志を固めている。
この市場環境持続で、少なくとも本年前半は日量150万バレル程度の供給過剰が続くとみられている。加えて年初の中国経済減速リスクによる株安(経済不安)と原油安の連動、経済制裁解除に伴うイラン原油市場復帰への思惑などが絡み、年初からの原油安となった。経済不安がとりあえず収まり、株価反転で原油も40ドル前後まで値戻ししたが今の需給環境から、当面はまだ上値が重い展開が続くのではないか。
◆谷深ければ山高し
しかし、高価格がシェールオイル大増産によって需給緩和を引き起こしたのと逆に、2015年からの低油価は主に非OPEC石油生産への影響を通し、供給過剰を徐々に削減し始めている。コスト削減努力などで、当初の想定以上に低油価への耐性を示してきた米国シェールオイルであるが、ついに減産基調が明確になり、非OPEC生産も今年は前年割れとなる。
その結果、年末に向けて需給は緩やかに均衡していくだろう。WTIは当面の供給過剰で年前半は35~40ドルを中心とした推移、後半は若干切り上がって40~50ドルが中心線になると筆者は見る。中国リスクやイラン原油復帰の状況次第で再び油価に下押し圧力が強く作用する可能性もある。
逆に株価上昇、非OPEC減産拡大、産油国での供給支障発生等で価格上昇圧力発生もありうる。またサウジを中心とした主要産油国の今後の生産政策も要注目だ。2月の「増産凍結」合意を第一歩として生産調整本格化に向けた動きがありうるのかもポイントだ。
いずれにせよ今の油価水準は持続可能ではない。今後5年間の需要増加を満たすため、既存油田自然減退分も考慮すると高コスト石油生産が日量1000万バレル近く必要になる可能性もある。その必要投資実現のため20年頃に油価は70ドルを目指すのではないか。しかし現実には世界の石油開発投資は石油会社の業績悪化で2年連続大幅削減となっている。「谷深ければ山高し」ともなる可能性に留意すべきだ。
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【プロフィル】小山堅
こやま・けん 早大大学院修了。1986年日本エネルギー経済研究所入所。2011年から現職。英ダンディ大学留学、01年博士号取得。専門は国際石油・エネルギー情勢分析など。56歳。長野県出身。
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