報道スタンスに疑義 古舘氏らキャスター降板 「偏ってるんです、私」
テレビ各局を代表する報道番組キャスターが3月、相次いで降板した。テレビ朝日系「報道ステーション」の古舘伊知郎キャスターは安全保障関連法や「緊急事態条項」を最後まで批判し、31日に番組を卒業。TBS系「NEWS23」などでもキャスターが交代する中、意見が対立している問題で一方の立場のみを代弁するような報道姿勢には疑義が上がっている。
「人間は少なからず偏っている。情熱を持って番組を作れば多少は番組は偏るんです」。古舘氏は31日の放送の最後、「直言」を貫いてきた12年への自負をにじませた。
その言葉通り、古舘氏は3月の放送で積極的に自説を展開。安保関連法が施行された29日には「やり直して廃案にするなら廃案にする。そのくらいの気構えで国会をやってほしい」と強調。18日には独ワイマール憲法とナチスの全権委任法を持ち出し、緊急事態条項を盛り込んだ自民党の改憲草案を批判した。さらに、11日には、東京電力福島第1原発事故と甲状腺がんの「因果関係がないというのは甚だ疑問だ」と訴えた。
古舘氏のほかにも、NHK「クローズアップ現代」の国谷裕子(ひろこ)キャスターが17日に番組を降板。同日の放送は、安保関連法に反対する学生らのグループ「SEALDs(シールズ)」中心メンバーらを取り上げた。TBS系「NEWS23」アンカーを25日に降板した岸井成格(しげただ)氏は「報道は極端な見方に偏らず、世の中の常識を基本とする。権力を監視するジャーナリズムを貫くことが重要」などと強調した。
テレビ報道をめぐっては昨年、安保法制審議を伝えた番組内容に疑義が相次いだ。作曲家のすぎやまこういち氏が代表呼びかけ人を務める「放送法遵守を求める視聴者の会」は、「NEWS23」アンカーの岸井氏が「廃案に向けてずっと声を上げ続けるべきだ」と発言したことを問題視。政治的公平や多角的な論点の提示を義務付けた放送法4条違反の疑いがあるとして公開質問状を送ったが、岸井氏は回答しなかった。
一方、岸井氏らテレビで活動する一部ジャーナリストは今年、高市早苗総務相の「電波停止」発言に抗議した。ただ、岸井氏は2月の会見で、視聴者の会からの批判を「低俗で品性、知性のかけらもない」と切り捨てた。法律の従来解釈を答弁した高市氏と、「放送の自由」を叫ぶ一部ジャーナリストや野党、番組に疑問を呈する視聴者の主張は平行線をたどっている。
古舘氏は昨年12月の会見で、「キャスターが意見を言ってはいけないということはない。偏っていると言われたら偏ってるんです、私」と強調。一方、テレビ朝日の早河洋会長は3月、「(報道姿勢が)一方的だったかというと、それは古舘氏個人というより番組の未熟な点だった」と述べた。
ジャーナリストで元フジテレビ解説委員の安倍宏行氏は「キャスターは本来、コメンテーターや学者などさまざまな意見を紹介し、視聴者に考える材料を提供するため、番組を仕切る人だ」と指摘。「キャスターが勝手に自分の意見を言い、印象操作するようなことがあってはならない。そこを勘違いしている報道番組が多いと感じる」と話している。(三品貴志)
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