鹿島酒蔵ツーリズム 官民連携で成功重ねる
Sakeから観光立国□平出淑恵(酒サムライコーディネーター)
今年5年目を迎えた佐賀県鹿島市の「鹿島酒蔵ツーリズム」。市内6つの蔵元の蔵開きと町歩きの祭りが3月26、27の両日、開かれた。昨年から温泉で名高い、隣の嬉野市の3つの蔵元とも連携したこともあって、過去最高の7万5000人の来訪者を記録した。
佐賀県の中ほどに位置する鹿島市は人口約3万人で、主な産業は有明海のノリ養殖や稲作、かんきつ類の栽培などだ。
転機は2011年に、市内にある富久千代酒造の「鍋島 大吟醸」がロンドンで行われた世界最大規模のワイン審査会、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)で世界一の「チャンピオン・サケ」に輝いたこと。これをきっかけに市内の蔵元や市民、観光協会、行政が協力して、12年の蔵開きの祭りを「酒蔵ツーリズム」に発展させ、大成功を収めた。
その後、観光庁に発足した酒蔵ツーリズム推進協議会でも広く全国に紹介され、政府や他県の酒造関係者による視察が毎月のように続いてきた。鹿島酒蔵ツーリズム推進協議会会長を務める馬場酒造場(「能古見」醸造元)の馬場第一郎社長は「まだまだ改善点はある」と新たな展開に思いを巡らせる。
酒蔵ツーリズムは、地域にある酒蔵を観光資源として交流人口を増やしていく取り組み。12年に始まった政府の「國酒プロジェクト」で、各省庁に日本酒振興の担当者が置かれた現在、中央と地方との連携によって実を結ぶ可能性のある地方創生事業と多くの関係者が注目する。
鹿島酒蔵ツーリズムは佐賀県のサポートや鹿島市、酒蔵、市民が当事者意識をうまく共有して実績を上げている点が、高く評価されているのだろう。
祭りの翌日、市役所に樋口久俊市長を訪ねた。樋口市長は市のスタッフをねぎらいながら「鹿島酒蔵ツーリズムは次のステージに進化を続けますよ」と、今後の一層の発展に意欲をみせていた。
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【プロフィル】平出淑恵
ひらいで・としえ 1962年東京生まれ。83年、日本航空入社、国際線担当客室乗務員を経て、2011年、コーポ・サチを設立、社長に就任。世界最大規模のワインコンペティション、インターナショナル・ワイン・チャレンジの日本代表。観光庁酒蔵ツーリズム推進協議会メンバー、一般社団法人ミス日本酒顧問などを務める。
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