「円安のゲタ」履く日本企業 FRBがドル高牽制、減益続出も
高論卓説円安のゲタを脱いだ日本企業の業績と株価はどうなるのか-。3月日銀短観の大企業・製造業の想定為替レートが117円台となったのを見て、多くの市場関係者はこんな連想をしたのではないか。米連邦準備制度理事会(FRB)が緩やかな利上げを志向し、円安ドル高進行のハードルは上がっている。もし、円安依存の企業が多かった場合、今年の日経平均は海外動向に振り回され、値幅の大きな展開になると予想する。
3月短観で示された想定レート117.46円は、1日の東京市場で取引された112円前半から5円超も円安となっている水準だ。
昨年前半のように、日米金利差の拡大を材料にドル円相場が円安方向に動けば、輸出企業を中心に為替差益で収益が押し上げられ、増益基調を維持できる企業が増えるだろう。
しかし、足元の外為市場を見ていると、そのシナリオの実現性に「黄信号」が点滅しているように見えてならない。
最大の要因は、FRBの金融政策スタンスだ。イエレン議長は3月29日の講演で「政策調整を慎重に進めることが妥当だと考える」と明言。一部で主張されている年内3回の利上げ路線とは明確に距離を置いた。
また、一部のFED(連邦準備制度)ウオッチャーの中には、こうしたイエレン議長らの発言の背景には、ドル高進展による国内総生産(GDP)下押し効果への懸念があるという見方がささやかれている。
「ゆっくり利上げ」と発信することで、過度のドル高圧力を回避するとともに、適度な成長と物価上昇、利上げ回数をどれも達成させる狙いがあるとの見方だ。
仮に112円前後の水準が長期化するようなら、117円の想定レートを組んでいる企業にとって、増益要因がなくなるだけでなく、減益要因が増加することになりかねない。
いわゆる「円安のゲタ」を脱いでも、増益基調を維持できる企業がどの程度の割合で存在するのか-。今年は、日本企業の実力が試される年になるだろう。
ただ、利益剰余金を過去最高の355兆円も貯(た)め込み、2016年春闘のベースアップ率は昨年を下回る現実を見るにつけ、日本企業が独自の戦略を策定し、その下で積極的にリスクを取って将来を見据えた設備投資に注力しているとは思えない。
この私の見方が正しいなら、前年に計上した為替差益分の利益がなくなって、前年比減益となる企業が、かなりの割合になるだろう。
最近の電機業界における名門企業の凋落(ちょうらく)を見ると、戦略的な投資を怠った企業に未来はないとの思いが深くなる。
企業経営者の勇気ある行動が、日本経済の未来を切り開いていくことになる。「円安のゲタ」を履いているだけでは、株主に対する説明もおぼつかないことになるのではないか。
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【プロフィル】田巻一彦
たまき・かずひこ ロイターニュースエディター 慶大卒。毎日新聞経済部を経てロイター副編集長、コラムニストからニュースエディター。55歳。東京都出身。
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