変われるか日本企業 大学基点の共同開発でイノベーションを
高論卓説大学が基点となり複数の企業や個人を巻き込み、新たなイノベーションを目指すユニークな取り組みが活発になってきた。
大和ハウスグループのフレームワークス(本社・東京、秋葉淳一社長)は、東京大学と組み「物流オープンデータ活用コンテスト」を実施する。同社は物流のクラウドサービスやコンサルティングを手掛けるサービスプロバイダーだが、コンテストの審査委員長を務めるのは、IoT(モノのインターネット)提唱者で、1980年代から推進する「TRONプロジェクト」で再び脚光を浴びている坂村健・東大教授だ。
フレームワークスが自社の倉庫管理や物流データを応募者に公開。ビジネス、研究、一般・教育・ゲームの3部門から応募者はスマートフォンアプリやレポートなどで応募する。基本的に世界中から誰でも応募は可能だ。賞金は総額500万円(最優秀賞は200万円)。応募期間は4月18日から7月18日。
誰でも参加できるコンテストにより賞金を与えて新しい技術開発を狙う手法を、「Xプライズ」方式と呼ぶ。米国防高等研究計画局(DARPA)が、完全自動制御のロボット自動車開発を目的に実施した無人カーレースなどで採用し、世界各国の大学が企業の支援を受けて競技にしのぎを削ったことで知られる。高度な技術開発を低コストで実現しようという取り組みだ。
「イノベーションするためのポイントはデータのオープン化。BtoB(企業間取引)で一般になじみの薄い物流・倉庫業界からのオープンデータ化は、日本の変革の象徴」と坂村教授は語る。
秋葉社長は「人手不足に苦しむ業界内だけでの変革では無理と判断。坂村先生にアプローチしたが、多くの参加でイノベーションを起こしたい」と語る。応募作品の審査精度の向上、さらには応募側の安心感においても東大との協力は有効だ。
住友重機械工業と産業革新機構は、がんの新しい治療法として期待されるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に使うホウ素薬剤の開発を推進する目的で、ステラケミファの100%子会社であるステラファーマ(本社・大阪市、浅野智之社長)に出資した。
BNCTのための小型中性子発生装置などの機器システムを造る住友重機と、ホウ素薬剤のステラケミファとは共同開発を進めてきたが、中間には京都大学の存在があった。
2012年秋から京都大学原子炉実験所、ステラファーマと共同で実験を開始。従来、中性子を発生させるには原子炉が必要だったが、世界初となる加速器を用いたBNCT臨床試験を同実験所で始めている。安全性を確認するための治験を重ね、年内にも薬事申請を行う予定だ。
「役割分担が違うこともあるが、京大があるため三者がうまくスクラムを組めてきた。情報も共有されている」(住友重機幹部)と話す。
電通と明治大学は「エスノグラフィー」に関する産学共同プロジェクト「エスノ・アイディア・ラボ」を始めている。エスノグラフィーはマーケティングリサーチの中で、定性調査としての中核的な手段。日本ではなじみが薄いが、欧米では広く使われている。伝統的な調査手法とは異なり、調査する対象の内部に入りインタビューしたり、詳しく観察したりすることで、いわゆるインサイト(消費行動などの核心)を見いだしていく。
藤田結子・明大商学部准教授は「先行事例のない革新的な製品開発に役立つ反面、成功ノウハウはみな企業秘密になる。そこでプロジェクトを通し、企業に共同研究の機会を提供している」と語る。
すり合わせ志向で他者との連携を好まない傾向の日本企業だが、オープン志向へと大学とともに変わっていけるのか。
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【プロフィル】永井隆
ながい・たかし ジャーナリスト。明大卒。東京タイムズ記者を経て1992年からフリー。著書は「サントリー対キリン」「人事と出世の方程式」など多数。58歳。群馬県桐生市出身。
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