技術や職人技を新分野に 工具箱メーカーがカバン、バネ工場がブロック玩具

 

 工業分野で高い技術を持ったメーカーが、新しい市場を求めてこれまでになかった製品を送り出す。長年培った技術を使って、伝統工芸の工房が新しい分野に進出する。次代を見据えたこうした取り組みは、激変する社会を企業や働き手たちが生き延びる上で、ひとつの指針となりそうだ。

 国内外から最新の雑貨が集まる見本市の第81回東京インターナショナル・ギフト・ショー春2016。その中に設けられた「ACTIVE CREATORS(アクティブクリエイターズ)」というコーナーに、クールで硬そうな質感を持ったアルミニウムと、暖かさや柔らかさがにじみ出るレザーという、印象も手触りも違った素材を組み合わせたカバンが並んでいた。

 手掛けたのは、スチール製の工具箱で知られる東洋スチール(大阪府東大阪市)という会社。自社の製造技術をいかしながら、これまでにないアイテムを送り出そうと立ち上げた「KONSTELLA(コンステラ)」ブランドの第1弾製品だ。ビジネスシーンをサポートする道具箱、という位置づけを持たせたブランドで、見本市では3種類のカバンを提案していた。

 このうちのプロテクションケースは、13インチの薄型ノートパソコンを入れ、PCアクセサリーやスマートフォン、ステーショナリーなども入れて持ち歩ける。レザー製のハンドルがついたブリーフケースは、プロテクションケースよりやや大きめで、ノートパソコンやタブレットのほか、仕事に必要な品々を入れて持ち歩ける。

レザー製のストラップに手を通して持ち歩くタイプのポーチもあって、スマートフォンや筆記具、モバイルバッテリーなど、ポケットに収めるにはかさばりそうな品々をまとめて入れられる。シルバーやシャンパンゴールド、ブラックといったカラーがあり、ポーチはローズピンクも選べて、女性でも手にできそう。

 これらのカバンの裏側についているのが、十文字の形をしたへこみ。東洋スチールが長年の主力商品としているスチール製工具箱に使われている意匠と同じものだ。平たい金属製の板に強度を出すための工夫だったが、フラットな印象を持ったアルミニウム製のカバンでは、デザイン上の良いアクセントになっている。

 「KONSTELLA」は、新しい分野に挑戦したい東洋スチールと、2012年に近畿経済産業局が主宰した、若手デザイナーを対象にした知的マネジメント講座「デザイン道場」を卒業した有志メンバー5人が結成したデザインプロデュースチーム「Iroyori(イロヨリ))との共同開発で生まれた。今回の出展で得たバイヤーやユーザーからの反応を元に手を加え、早期に製品として送り出す。

 昨年11月に東京ビッグサイトで開かれたデザインフェスタVol.42でも、意外な企業の新規事業が見られた。出展していたのは五光発條(横浜市瀬谷区)という部品メーカー。機械製品やエレクトロニクス製品に部品として使われる小さなバネを製造している会社が、若い人が好む雑貨やファッションが集まるデザインフェスタだけに、売っていたのは工業用のバネではない。

 五光発條が並べていたのは、「SpLink」というブランド名のブロック玩具。小さいながらも様々なサイズや形があるバネとジョイントを組みあわせることで、どんなものでも作り出せる。ブースには一例として、スマホケースや名刺入れを作って販売していた。針金と違って弾力性を持っているため、変形させても折れ曲がったままにはならない。中にiPhoneや名刺を入れれば、周囲を覆うようにして本体をしっかりとガードし、衝撃を抑える。

 自分でパーツから組み立てれば、機種を変更して大きくなったスマホにマッチしたケースも作り出せそう。パーツさえあれば、小さいアクセサリーから置物の戦車、巨大な剣まで何でも好きな物を作って遊ぶことができる。

 技術を持った部品メーカーが、自分たちの存在を世の中にアピールする品として初めて挑んだ一般向け製品。その成否は、同じように技術を使って新機軸を生み出したいメーカーなどの関心を呼びそうだ。

 ギフトショーの「アクティブクリエイターズ」コーナーには、50年近いキャリアを持つ革職人の技術を活かし、新しい時代にマッチした革製品を手掛ける紗蔵(東京都墨田区)も出展して、牛革の袋にがまぐちのような金属製の留め具をつけた、iPadを入れて持ち歩ける大きさのブリーフケースなどを出していた。福岡県の筑前津屋崎人形巧房(福津市)は、人形に使われる伝統の文様を手描きしたピンバッジを作り、若い人のアクセサリーとして提案していた。

 伝統工芸の工房が、技術やデザインを新しい分野へと展開して、従来とは違った層に刺さる品物を作る。2020年の「東京オリンピック/パラリンピック」開催で増える海外からの観光客にも、日本の伝統工芸と現代的なファッション性が合わさった品物はヒットしそうだ。

写真 工具箱の東洋スチールがスタイリッシュなカバンを提案

写真 工具箱の製造技術と新しいデザインが融合して生まれた「KONSTELLA」

写真 大小さまざまなバネを組みあわせて遊ぶ「SpLink」

写真 バネメーカーの技術と遊び心から生まれた五光発條玩具「SpLink」

写真 「SpLink」のチラシ

写真 筑前津屋崎人形巧房が提案した伝統の文様を手描きしたピンバッジ