「有機EL」競争本格化 韓国LG追う日本勢、シャープはアップル採用にらみ増産

 
LGエレクトロニクス日本法人が有機ELテレビの新製品を発表した=13日午後、東京都中央区

 テレビやスマートフォンの高画質と薄型化を実現できる次世代の表示装置「有機EL」をめぐる競争が本格化してきた。有機ELテレビで先行する韓国LGエレクロトニクスは5月下旬から、日本国内で販売する大型テレビのラインアップを拡充するほか、パナソニックも有機ELテレビを世界展開する方向で検討に入った。一方、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入るシャープも、米アップルが2018年にもスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」に有機ELを採用することを見込み、総額2000億円を投じて量産体制を築く計画だ。

 LGが順次発売する有機ELテレビの新製品3シリーズ5モデルは55型と65型があり、明暗表現に優れた「HDR(ハイダイナミックレンジ)規格」に対応している。発光材料は出光興産が提供する。想定価格(税別)は高級タイプが70万円前後~90万円前後、曲面タイプが47万円前後。今夏に発売する標準タイプは「液晶テレビの1.2~1.3倍の価格で提供したい」(日本法人の李仁奎(イ・インギュ)社長)考えだ。

 有機ELは、電圧をかけると自ら発光する材料を回路基板に付着させ、画像を映し出す。バックライトが不要で、闇を漆黒で再現できるほか、薄型化が可能となる。LGは世界に先駆け、13年に高精細の大型有機ELテレビを発売、今年は全世界で100万台の販売を目指す。

 これに対し、日本勢も追撃態勢の構築を急ぐ。パナソニックは早ければ17年初めから、欧州に限定している有機ELテレビの販売地域を日本やアジア、オセアニアなどに拡大する方向で検討中だ。

 また、シャープは鴻海から今後振り込まれる3888億円の資金のうち、半分以上の2000億円を有機ELの開発や生産ラインの構築に投入する。

 シャープは、低消費電力で高精細を実現する独自液晶「IGZO(イグゾー)」が強みだ。鴻海の郭台銘会長は「有機ELよりIGZOの方が生産費用面で優れている」としているが、IGZOで使用する半導体技術は有機ELにも応用が可能という。

 シャープは数年前から、有機ELパネルを開発。経営不振でこれまでは積極投資に踏み切れなかったが、鴻海の資金力を背景に技術的な優位性を高め、韓国勢を追撃する構えだ。

 このほか、官民ファンドの産業革新機構傘下の液晶パネル大手ジャパンディスプレイ(JDI)と、パナソニックとソニーの有機EL事業を統合したJOLED(ジェイオーレッド)も18年からの量産化を目指す。