トヨタに追いつけない…苦戦続くホンダと日産 「2人のアサコ」手腕に注目

 
国内新車販売で激突するホンダ執行役員の鈴木麻子氏と、日産自動車専務執行役員の星野朝子氏

 自動車業界で「2人のアサコ」が話題になっている。ホンダの生え抜きとして初の女性執行役員に就任した鈴木麻子氏(52)と、日産自動車専務執行役員の星野朝子氏(55)。同名の女性2人がくしくも国内販売を担当することになったためだ。自動車販売の現場では、家庭の財布のひもを握る女性のハートをいかにつかむかが売れ行きを左右するとされる。消費税率引き上げや軽自動車税増税などで苦戦が続く国内販売で、2人の手腕に注目が集まっている。

 中国100万台に貢献

 《国内販売、アサ子対決に!》

 ホンダの4月1日付の役員人事で、中国の合弁会社のトップだった鈴木氏が執行役員に就任、日本本部の営業企画部長となることが決まり、自動車雑誌にこんな見出しが躍った。

 国内の営業戦略などを立案する重要なポジションであり、八郷隆弘社長は「『女性だから』というより、優れた人材、能力があるということで任命した」と太鼓判を押す。

 鈴木氏はこれまでタイやマレーシア、ベトナムなどに駐在し海外事業を担当、財務部門なども携わった。

 社内評は「わからないことはすぐに部下に質問し、人当たりがいい」「威張らない」などと上々だが、直近は中国の合弁会社のトップを務めており、「現地の中国企業との交渉など“修羅場”もくぐり抜けている」という。

 ホンダは昨年、景気減速にも関わらず、中国で過去最高となる100万台超を売り上げた。その成功を再び国内で実現できるか、鈴木氏への期待は大きい。

 日本事業を統括

 一方、日産の星野氏は昨年4月に女性として初の専務に就任した。国内販売を担当する日本営業本部のトップなどを務めていたが、今年4月からは日本事業担当の専務として、販売に加え、開発や生産も含めた日本事業全体の収益を見ることになった。

 カルロス・ゴーン社長が「わが社の秘密兵器」と評する星野氏も就任から2年がたち、いかに結果を出していくかの時期ににさしかかっている。

 鈴木氏と星野氏、大手自動車メーカーで役員に上り詰めた2人だが、歩んできたキャリアはそれぞれだ。

 ホンダ生え抜きの鈴木氏と異なり、星野氏は銀行を退職後、米国で経営学修士(MBA)を取得。マーケティングリサーチの専門家として活躍していたところをゴーン社長にヘッドハンティングされた。

 首位トヨタの背中遠く

 国内新車販売は前年割れが続いており、特にホンダと日産の不振が際立っている。

 登録車で5割近いシェアを持つ首位のトヨタは昨年、前年比3.6%減の142万台を販売。一方、ホンダは14.6%減の38万台、日産は11.8%減の37万台に止まり、落ち込み幅はトヨタを上回った。

 ホンダは主力車「フィット」で相次いだ品質問題で新型車の投入が遅れ、思ったような販売台数につなげられていない。日産も国内で新型車が少なく、反転の兆しをつかめないままだ。

 さらに、ディーゼルエンジン車が好調なマツダやスポーツ用多目的車(SUV)を得意とする富士重工業、価格を抑えたモデルをそろえる海外メーカーにもシェアを奪われている。

 そんな中、ホンダは昨年、ファミリー層を中心に販売が期待できる売れ筋のミニバンで、新型「ステップワゴン」を投入。縦・横両方向に開く後部ドアや、自動ブレーキなど先進の安全運転支援システムを搭載した。対する日産も今年「セレナ」を全面改良。一部自動運転の機能を搭載するとされており、がっぷり四つに戦うことになる。

 女性客取り込めるか

 日本の自動車販売では、女性客の取り込みが不可欠だ。

 日産の調査では、購入の決定権は女性が6~7割を握っており、候補を選ぶのは夫ら男性だが、最終的に買うかどうかの判断は妻など女性の意見を聞くケースが目立つという。

 今や新車販売に占める割合が4割を超えた軽自動車もユーザーは女性が多いことから、その傾向は一層強まっている。

 各社とも女性を意識した販売戦略に力を入れており、日産は女性客への対応に力を入れたレディーファースト店舗を全国約250店で展開。女性のカーライフアドバイザーを常駐させているほか、キッズスペースや駐車しやすい駐車場などを確保している。

 ホンダと日産、それぞれの女性役員がならではの視点で女性客にアピールできるかが、国内販売テコ入れのカギになりそうだ。

(田村龍彦)