但陽信用金庫 知的資産経営支援(1)

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 ■取引先と同じ目線で課題共有

 財務に表れない技能や特許、ブランドなどの知的財産、組織力、顧客ネットワークなど無形の経営資源を把握し、それを活用することで業績向上を図る「知的資産経営」。兵庫県加古川市に本店を置く但陽信用金庫は、地元企業への知的資産経営の支援にいち早く乗り出し、大きな成果を出している。

 地域密着型金融において、目利きやコンサルティング機能の発揮が求められる中、但陽信用金庫は、ひょうご産業活性化センターが実施する「ひょうご中小企業技術・経営力評価制度」の活用に2005年から取り組んできた。この制度は中小企業の技術力やノウハウだけでなく、成長性・経営力などを第三者機関が総合的に評価するもの。利用企業は、自社の魅力のアピール材料の発掘とともに、事業改善や成長のヒントをつかむことができる。

 当初、この制度は製造業の技術力を中心に評価する制度だったが、知的資産経営はもっと広範に強み・弱みを浮き彫りにでき、取引先が主体的に取り組める。08年に活性化センターが知的資産経営に取り組んだ企業の発表会を開催。この会場に足を運び、感銘を受けた同信金の藤後秀喜常務理事は桑田純一郎理事長に報告、知的資産経営の支援活動に乗り出す承認を得た。

 藤後常務理事は「企業のさまざまな経営課題に応じ、最適なソリューションを提供していくことが地域金融機関の役割。取引先と同じ目線に立って経営課題を発掘・共有し、改善策や強みの生かし方を検討していくことが重要で、まさに本業支援の入り口の部分にあるのが知的資産経営の支援だ」と、話す。

 具体的な支援活動では、まず知的資産経営について理解してもらうための「知的資産経営支援セミナー」の案内・勧誘からスタートした。セミナーのプログラムは2部構成。第1部では、専門家(中小企業診断士)が「知的資産経営とは何か」をテーマに講義を行う。第2部では、前年度に経営リポートや報告書を作成した企業に体験談を話してもらう。09年度から7年間で551社が参加。そのうち経営リポートの作成が141社、報告書の作成が42社となっているという。

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 (編集協力)近代セールス kindai-sales.co.jp