中国はフィンテック先進国? 日本の電子マネー決済市場に影響力も

高論卓説

 FinTech(フィンテック)はFinance(金融)とTechnology(技術)を掛け合わせた造語だ。フィンテックを金融とITが融合したソリューションと広義に捉えると、モバイルプラットフォームを利用した中国のアリババの支付宝(アリペイ)のような決済サービスも、フィンテックの一種であり、中国はフィンテック先進国といえるかもしれない。

 通信販売の決済手段としてスタートしたアリペイだが、実名認証ユーザー数4億人を抱えるメッセンジャーアプリの微信(WeChat)とともに、今や中国人の日常生活になくてはならないツールへと変貌しつつある。

 通販などで売り手と買い手の間を取り持ち、取引を円滑に行うための「第三者決済システム」がアリペイの本来の機能だ。通販の決済手段だったものが、航空機・列車・映画のチケット、金融商品などの購入、さらに公共料金の支払いなどの機能を順次拡張し、現在に至っている。アリペイを利用すれば、日常生活に必要な支払い機能のほとんどがカバーされるといっても過言ではない。

 タクシーの利用者にとって、なくてはならない配車アプリもアリペイに組み込まれている。GPS(衛星利用測位システム)の位置情報と組み合わせ、スマートフォンの画面を見れば周辺に何台タクシーがあるかが一目で分かる。行き先を入力すれば運転手が反応し、運転手の電話番号、車のナンバーも表示されるので、迎えに来た車に乗れば良い。運転手も行き先を事前に確認しているので、乗車してからもめることもない。

 配車費用も不要で、つかまりにくい場合は、チップを上乗せして価格交渉も事前にでき、料金の支払いもキャッシュレスで可能だ。2012年にスタートした配車サービスは、正規タクシー以外の自家用車をグレードの高い「ハイヤー」として利用できる「専車」というサービスも取り込んで進化している。

 アリペイはスマホ本体に専用のチップを搭載するのではなく、アプリケーションをインストールし、2次元コードを読み取ることで店舗での決済も可能にしている。そのため多様なサービスと組み合わせやすい。また機種に依存せず、低価格のスマホでも利用可能だ。

 中国での利用は急拡大しており、日本でも訪日中国人のニーズに応えるために、百貨店、コンビニエンスストア、ディスカウントストアなど免税利用の多い店舗では、アリペイで支払いができるよう対応を開始している。

 中国でのアリペイのモバイル決済市場におけるシェアは7割といわれ、これを追うのが微信支付(WeChatの支払い機能)と、この2月に世界で5番目の市場として中国でサービスを開始したアップルペイだ。アップルペイは、iPhone(アイフォーン)の機能を利用して支払いを行うもので、全世界で50億枚の発行枚数を誇る中国銀聯カードと提携した。2次元コードを利用したアリペイと微信支付のシェア争いに、新たにアップルペイが加わった形となる。

 訪日中国人旅行者が増えたことで、日本で銀聯カードの利用できる店舗も増えた。銀聯と提携したアップルペイが中国でそれなりのシェアを確保することになれば、日本でも訪日旅行者用の端末の設置も増えるはずだ。日本はiPhoneのシェアが高いぶん潜在利用者が多く、決済用インフラが整えばアップルペイの日本市場での展開も容易になるはずだ。中国における3者のシェア争いの結果によっては、日本の電子マネー決済市場にも影響が及ぶことになりそうだ。

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【プロフィル】森山博之

 もりやま・ひろゆき 早大卒。旭化成広報室、同社北京事務所長(2007年7月~13年3月)などを経て、14年より旭リサーチセンター、遼寧中旭智業有限公司主幹研究員、57歳。大阪府出身。