補償拡大、販売減は海外にも波及…相川社長「最大限の早期収束に行動」も再生の道険しく

三菱自不正
決算発表記者会見で厳しい表情を見せる三菱自動車の相川哲郎社長=27日、東京都港区の三菱自動車本社

 三菱自動車が27日の決算会見で平成29年3月期業績予想の発表を見送ったのは、燃費データ不正問題による業績への影響が、どこまで広がるかが見通せないためだ。不正対象車の拡大で補償額は膨らみ、対象車の販売停止などで国内の受注は半減した。収益を依存する海外市場にも影響は波及しつつあり、再建への道筋は見えない。(会田聡)

 相川哲郎社長は同日の記者会見で「財務の影響は、(燃料代などの補償の)前提となる燃費を再試験で確認しないと決められない」と述べた。三菱自は5月の連休明けまでに燃費データの偽装があった軽自動車4車種の燃費を再試験。実際の燃費と公表値との差から、燃料代の差額やエコカー減税の追加負担を算出して補償額を検討する方針。

 ただ、26日には平成3年から約25年間にわたり、燃費試験で法令とは違う走行試験法を社内で使っていたことを発表。4車種以外の車種についても調査を始めており、対策を求められる公算が大きい。

 さらに、国内販売がどこまで落ち込むかも課題だ。27年度の国内販売10万2千台のうち、販売を停止した主力軽「eK」シリーズは4割強を占める。販売再開には国土交通省の認証を受ける必要があり、停止期間は長期化する恐れがある。

 また、27年度の営業利益のほぼ全てを稼いだ海外市場にも余波は広がる。欧米メディアは26日、米環境保護局(EPA)が三菱自に対して、米国で販売した車について追加の燃費試験を命じたと報じた。

 今後の補償について、三菱自は手元の現預金約4600億円などから支払う方針だ。田畑豊常務は「一般的に必要な運転資金は売上高の1カ月分(約2千億円)」として、差し引き2千億円超を補償の原資に充て、早期収束を目指す。

 だが、三菱自株の27日の終値は前日比12円安の422円と続落し、不正発覚前の19日終値(864円)から半減した。市場では「先行きに不安感がある」(大手証券担当者)との声が根強い。相川社長は会見で、「もう一度復活するために最大限の早期収束に向け行動する」話したが、再生への道のりは険しい。