ゴルフ市場復活 鍵は「みる」魅力
スポーツi.□フリーランスプランナー・今昌司
昨年のことになってしまうが、「2015年問題」をご存じだったろうか。日本のゴルフ人口の中心層と言われる50代、60代のうち、団塊世代がいよいよ65歳を迎え、企業人としてのリタイヤが加速する、ということらしい。バブル終末期の1990年代初頭期のゴルフ人口は1200万人と言われていた。それが、今では約720万人。減少傾向はまだまだ続いているという。ゴルフ場市場は2兆円近くあった規模から9000億円にまで減少し、ゴルフ用品市場もピーク時から半減の3400億円となっている。バブル崩壊から約四半世紀で、日本のゴルフ市場は半減しているのである。
◆2.5倍超の潜在需要
昨年春、日本プロゴルフ協会、日本ゴルフ場経営者協会などの業界団体は、ゴルフ業界再生への道筋として、ゴルフ練習場市場を含めた現在のゴルフ市場規模と推定される1兆4000億円を、10年で2兆円にする提言を発表している。スポーツというよりは社交の場、時にはビジネスツールとして拡大してきた日本のゴルフ市場は、果たしてかつての市場規模の復活を成し遂げられるのか。
先のゴルフ業界団体は、ゴルフ経験のない人たちを対象として1万人アンケートを実施している。その結果、余暇に年間10万円支出可能な人の中で「ゴルフに興味がある」と答えた割合を基に、プレー可能な人数から導き出した潜在需要が2000万人、とある。つまり、現在のゴルフ人口の2.5倍以上もの潜在需要が埋もれている、というのである。業界団体が示している道筋では、今年までに既存のやり方を見直し、2018年までに潜在需要層を開拓し、その後に新規事業を立ち上げて、加速度的にプレー人口を増加させていく、としている。
確かに、少子高齢化が進む中で、シニア層に対するアプローチはさまざまな業界で盛んに行われている。スポーツ界では、医療費削減の特効薬として生涯スポーツを促進し、シニア層のスポーツ参加率を引き上げていこう、との施策も唱えられている。しかし、ジョギングやウオーキングのように、用具ひとつとってもゴルフは手軽なスポーツとはいかない。一つの光明としては、「みる」スポーツとして、リオ五輪から正式種目となり、20年東京五輪でも行われることから、普段は親しむ機会がない人たちにも、ゴルフというスポーツの魅力が幅広く伝わる機会となることが期待される。そこから、若い世代を含めてプレー人口が増加する可能性は少なからずあるかもしれない。
◆努力奏功のLPGA
昨年の女子プロゴルフツアーでは、ギャラリー数を前年より3万人以上伸ばしている。今季は1試合増加の38試合となり、賞金総額も史上最高額の35億円超となる。これは男子ツアーを上回る規模である。昨季は、賞金獲得額の上位5位までが外国人勢に独占されてはいるが、ファン重視の戦略が功を奏し、女子選手ならではの魅力がスポンサーにも好感を得ていることで、興行成績は停滞気味の男子ツアーとは裏腹に、右肩上がりを続けている。年間の平均テレビ視聴率も、男子ツアーを1%近くも上回っている。こうした「みる」スポーツとしての成長性は、やがてプレー人口の増加策の糧となっていくであろう。
ただし、それは自然発生的に生まれているものではない。日本女子プロゴルフ協会(LPGA)の地道な努力があってのものなのだ。LPGAでは、毎年行っている新人セミナーにおいて、礼儀作法からマナーやメーク方法など、企業の新入社員向け教育以上のカリキュラムを組んでいるという。プロツアーでは、プロアマが恒例行事であるが、こうしたスポンサーやファンとの交流の場でのホスピタリティー力にも、LPGAの指導は生かされている。スポンサー、そしてファンあってのツアーである、というスポーツビジネスの原則をキチンと踏まえているのだ。
気象に例えれば「女高男低」。日本勢の活躍が課題としてはあるが、「みる」スポーツとして、単なる規模の比較以前に、中身の改革によってゴルフの魅力を発信している女子ツアーのあり方こそ、「する」スポーツとしてのゴルフ市場の復活の鍵が隠されているように思う。魅力あるスポーツとしてのゴルフを、特に、若い世代にその魅力が伝えられるものにしていくことが、男子ツアーにも望まれる。
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【プロフィル】今昌司
こん・まさし 専修大法卒。広告会社各社で営業やスポーツ事業を担当。伊藤忠商事、ナイキジャパンを経て、2002年からフリーランスで国際スポーツ大会の運営計画設計、運営実務のほか、スポーツマーケティング企画業に従事。13年より2年間は帝京大経済学部経営学科非常勤講師も務める。ブログは(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/umekichihouse/)
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