有資格者が施術、心と体リラックス アロマ看護ケア・永杉彩社長

 

 「アロマ看護ケア」は、看護師としての知識と経験に基づいて自宅や病院へ出張して介護するとともに、患者にアロマトリートメントを施すことで、つらさや苦痛を和らげることを主な事業としている。永杉彩社長は患者向けだけでなく、忙しい現場で疲弊する看護師に向けたケア事業にも力を注ぐ。

 ◆看護師からCA転身

 体がむくみがちになる患者に対し、アロマオイルを用いて手でもみほぐしてケアする。ラベンダーやローズなど、植物の成分を抽出し凝縮したアロマオイルは、ほのかな香りで心も体もリラックスできる。

 通常のアロマリラクゼーションと異なるのは、必ず看護師の資格保持者が施術前と後に血圧、脈拍、体温などを測り、既往症などを聞いた上で適切に対処する点。

 「心臓が悪い人の場合、血液の流れが良くなりすぎて逆効果になることがある」と看護師ならではの知見を生かす。これまでにむくみのせいで全身がだるく倦怠(けんたい)感がひどかった患者から「むくみが取れて全身が楽になった」と感謝されたこともある。

 父が貿易業を営んでいたことから、中高生のころには起業しようと思い立った。しかしどんな事業をすればいいか分からなかったことから、両親の薦めもあり看護師になった。

 3年間看護師として働いたあと、「社会的マナーや言葉遣い、接客の仕方を身につけて将来の起業に役立てたい」とキャビンアテンダント(CA)に転じる。

 エアドゥとルフトハンザドイツ航空で勤務する。国際線の長時間のフライトのあとは、ひどい足のむくみに悩まされた。そのとき同僚からアロマオイルを使ったセルフトリートメントを薦められ試すようになる。独特の心地よい香りにリラックスし、翌朝目覚めるとすっかりむくみと疲れが取れていてアロマの効果を認識するようになった。

 CAとして充実していた日々を送っていたころ、母の友人が、がんで余命3カ月と診断される。帰国して見舞いに行きアロマオイルで施術したところ「マッサージなんて初めて。こんなに気持ちいいんだ」と大変喜んでくれた。これが最期の出会いとなったが、このときの経験が医療現場に戻って起業するきっかけとなった。

 ◆潜在人材を採用

 2014年、ドイツから帰国し起業準備に取りかかる。その間、介護施設の仕事をしながら、アロマリラクゼーションのスクールと店舗で、本格的なアロマトリートメントのスキルを身につける。

 今は患者の元への出張や訪問が事業の柱だが、今後は看護師を対象とした病院向けの福利厚生事業や、看護師専用のサロン事業に力を入れる。

 スタッフは潜在看護師を積極的に採用していく。出産、子育てのほか、長時間労働などを理由に医療現場を離れている潜在看護師は、厚生労働省の推計で71万人とされている。専門知識を持ち、現場経験のある人材の活用は、人手不足に悩む在宅医療・介護の現場を充実させると期待されている。

 2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて外国人看護師も雇用し、現場を離れた看護師の幅広い受け皿となる。

 「ナースコールを押しても看護師が来ないという人手不足の現状を改善したい」と日本の医療環境の充実に貢献する考えだ。(佐竹一秀)

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 ≪Q&A≫

 ■独で学んだハーブの効用

 --海外生活での経験は、どのような形で起業に反映されているのか

 「父の仕事の都合で10~14歳まで、家族とともに米ロサンゼルスに住んでいた。米国では自分の考えをはっきりと表現することが当たり前で、新しいことに果敢に挑む精神も自然と身につけた。これらが起業家としての原動力となっている。CAとして生活していたドイツでは自然療法が普及していて、アロマやハーブの効用を知ることができ、現在の仕事に結びついている」

 --看護現場でマッサージをすることはあるのか

 「少しでも苦痛を和らげたいという気持ちはあるが、看護師不足で忙しく、そんな余裕はない。新人だったころ、患者の背中の薬剤を張り替えようとさすっていたところ、『ああ、気持ちがいい』といわれた。その後、仕事の合間に動けない患者を中心に背中をさすったり、手のマッサージを施したところ、よく眠れたと報告を受け、信頼関係も深まった」

 --採用した看護師にどのような形でアロマトリートメントの技術を身につけさせるのか

 「職業柄、アロマに関心の高い人が多い。自分で資格を取ってアロマ業界に転職する人もいるぐらいだ。休みがしっかり取れて夜勤の呼び出しもないので、当社が求人を出せば多くの潜在看護師が応募するだろう。当面、アロマの技術のない人は外部で受講してもらうが、数年後には自社でスクールを立ち上げる」

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【プロフィル】永杉彩

 ながすぎ・あや 横浜市医師会保土谷看護専門学校卒。産業能率大情報マネジメント卒。正看護師。平塚市民病院、クリニック勤務。エアドゥ、ルフトハンザドイツ航空の客室乗務員ののち、2015年1月アロマ看護ケアを設立し現職。32歳。神奈川県出身。

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【会社概要】アロマ看護ケア

 ▽本社=横浜市中区尾上町5-80 神奈川中小企業センタービル7階

 ▽設立=2015年1月

 ▽資本金=100万円

 ▽従業員=3人

 ▽事業内容=アロマトリートメント付き訪問看護サービスなど