保険会社が主導権!? 変わるクルマ社会

Bizクリニック

 □ビズライト・テクノロジー代表取締役社長 田中博見

 ネットにつながるクルマを「コネクテッドカー」と呼ぶ。すでに、たくさんのセンサーが搭載されており、CPU(中央演算処理装置)とソフトウエアとが相まって衝突回避ブレーキシステムなど多くのインテリジェントな機能が商品化されている。

 クルマの挙動、位置情報などをサーバーで収集することで、大きく分けて4つの変化が起こる。

 1つ目は社会インフラ全体として俯瞰(ふかん)したときに、クルマ一台一台がミクロなセンサーに見える点である。例えば、位置情報と速度を組み合わせればどこで渋滞が起きているかをリアルタイムでリポートできるし、ビッグデータ解析をすればこれから起こる渋滞を予測することができる。つまり社会全体へのデータの還元である。

 2つ目は所有者、つまりエンドユーザーに対する安全や利便性などの提供である。事故情報をセンサーが検出し、救急医療機関へ送信することで、生命の安全が確保される。タイヤの交換時期が知らされ、カーナビのモニターにクーポンとカーショップの位置情報が送られてくるサービスも、そう遠い未来の出来事ではない。

 3つ目はカーシェアリングビジネスとの融合である。すでに米国ではベンチャー企業が駐車違反の場所でなければどこに返却しても良い、というモデルを運営し始めている。クルマを借りたいユーザーは、スマートフォンで近くに借りられるクルマがないかを調べ、予約する。スマホはドアを開けるキーにもなる。まさに“コネクテッドカー”でなくては実現できないモデルであり、成長が見込まれる分野だ。

 社会的なインパクトが最も大きいのは4つ目。速度、ブレーキのかけ方、走行距離、走行場所などのデータをサーバーに収集することにより、ドライバーがどんな運転をしているかを判断し、保険料へのフィードバックを行うモデルである。これはテレマティックス保険と呼ばれ、市場規模は2020年に500億ドル(約5兆3600億円)を超えるという予測もある。日本でも走行距離や運転状況をモニタリングして割引分をキャッシュバックするというモデルは導入されているが、料金プラン自体が変更されるモデルは登場していない。しかし、これも数年で一般化することになるだろう。

 運転データの収集は、企業間取引にも影響を及ぼす。例えばタイヤメーカーは走行距離に基づく従量課金モデルで販売するようになり、運送事業者の初期費用はゼロになるだろう。また、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が航空会社に低燃費を実現するための航路や運航ノウハウを提供しているのと同様に、運用マネジメントを提供するようになるだろう。さらに、必ず保険が必要となるので、保険会社がファイナンスの主導権を握ることになるかもしれない。“モノからコトへ”-第4次産業革命はクルマ社会も大きく変えようとしている。

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【プロフィル】田中博見

 たなか・ひろみ システムハウス役員などを経て、1998年にアルファークラフトを設立。2004年に札証アンビシャス上場。06年ビズライト・テクノロジーを設立し、現職。公共交通関係のサイト構築、デジタルサイネージ、IoTゲートウェイなどを自社開発。ジンバブエ政府のサーバ構築も手がけた。53歳。北海道出身。