三菱自と日産の提携、今後の課題は? ゴーン社長「ファミリーの新たな一員」
日産自動車と三菱自動車が資本業務提携することで、合従連衡を繰り返す自動車業界に新たな組み合わせが加わる。両社はこれまでも他社と提携してきたが、三菱自は独ダイムラー・クライスラー(当時)からの出資打ち切りなど翻弄された一方、日産は仏ルノーと約17年にわたる提携を続けている。企業文化や経営の自主性をめぐる意見の食い違いなどを乗り越えられるかが課題になる。
信頼関係を強調
三菱自の益子修会長は12日の記者会見で、「(日産は)軽の共同開発で一緒に仕事してきて信頼関係がある。不正問題で早まったが、いずれこの道にきていた」と提携に自信を示した。
だが、三菱自は2000年にダイムラー・クライスラーと資本提携。リコール隠しが発覚する中、ダイムラー・クライスラーはアジアや商用車を得意とする三菱自に34%を出資して筆頭株主になった。
02年にはロルフ・エクロート氏を社長として派遣して経営への関与を強めた。だが、04年に2度目のリコール隠しが判明して業績がさらに悪化すると、支援を突然打ち切り、三菱グループの金融支援を仰ぐ事態に陥った。
この日の会見で日産のカルロス・ゴーン社長は「(三菱自とダイムラー・クライスラーは)提携してから協業分野を検討したが、われわれは逆だ」と違いを強調した。
ファミリーの一員
一方、日産も経営危機に陥った1999年に、仏ルノーと資本提携を結んだ。ルノーは36.8%(当時)を出資したほか、ゴーン氏を派遣して経営再建を支援。日産・ルノー連合を世界販売で4位に上る規模に成長させた。
ただ、昨年4月にルノーの筆頭株主のフランス政府が議決権を増やす制度を導入し、ルノーを通じて日産の経営にも関与する懸念が浮上。同12月に日産・ルノー連合とフランス政府が、日産の経営の独立を認める合意を結んだが、提携の難しさを改めて示した。
ゴーン社長は三菱自を「ファミリーの新たな一員」と呼び、「提携には長きにわたる実績がある」と強調した。今回の提携の成否が、燃費データ不正問題に揺れる三菱自の再建を左右することになる。
■日産自動車と三菱自動車の提携をめぐる経緯
1999年
≪日産≫
経営危機に陥り、仏ルノーと資本提携
2000年
≪日産≫
ルノー出身のカルロス・ゴーン氏が社長就任
≪三菱自≫
部品の欠陥隠し問題が発覚。独ダイムラー・クライスラーが出資
2002年
≪日産≫
ルノー株を取得。ルノーは出資比率を44.3%に引き上げ
≪三菱自≫
ダイムラー・クライスラー出身のロルフ・エクロート氏が社長に就任
2004年
≪三菱自≫
欠陥を認めてリコール
ダイムラー・クライスラーが支援を打ち切り、三菱グループが支援
2005年
≪三菱自≫
三菱商事出身の益子修氏が社長就任(現会長)
2010年
≪日産≫
独ダイムラーと資本業務提携
2011年
≪日産・三菱自≫
軽自動車を企画・生産する合弁会社を設立
2015年
≪日産≫
ルノー筆頭株主の仏政府と、日産・ルノー連合が日産の自主性維持で合意
2016年
≪三菱自≫
燃費データ不正問題が発覚
≪日産・三菱自≫
資本業務提携を発表
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