命を守るため「おくすり手帳」持ち歩きを 吉田聡
講師のホンネおくすり手帳を持つと薬代が安くなる! TVなどでよく目にするようになりました。薬剤師としては、おくすり手帳をすべての患者さんが持ってくれると非常にありがたいです。なぜなら、おくすり手帳があると同じような効果の薬や飲み合わせの悪い薬を、飲んでしまう前に気づいて防ぐことができるからです。
実は、おくすり手帳の役割はそれだけではありません。常に持ち歩くことで「命」を助けてくれます。
例えば、あなたは出張で新幹線に乗っていたとします。しばらくすると、急に胸が苦しくなりました。車掌を呼ぶも、苦しくて話すことができません。車掌はすぐに車内放送を行います。「お医者さまはいらっしゃいませんか?」。しばらくして、医師が到着しました。こんな時…医師は何も情報がない中であなたの状態を判断しなければなりません。一方、おくすり手帳を持っていると、飲んでいる薬から持病を特定できます。アレルギー歴や副作用歴、手術歴なども分かります。何が原因で倒れているのか、どうすれば助かるのか、すぐに見当がつきます。急な発作などは、最初の一手が的確で早ければ早いほど、命が助かる確率が高くなります。
倒れたときだけではありません。交通事故に遭ってしまったときも、おくすり手帳の情報があると、救急隊は適切な対処が素早くできます。このほか、災害の時にも役立ちます。災害の後、少し落ち着いた避難所などで身の安全が確保できると、持病のことが気になり始めます。その頃には、医療スタッフや薬も避難所に届いてきます。ところが、普段飲んでいた薬は、おくすり手帳でないと分かりません。避難所に薬が届いても、あなたにとって適切な薬かどうか見分けがつきません。おくすり手帳があると、記録されている薬の情報からすぐに適切な薬をお渡しできます。事実、おくすり手帳は21年前の阪神淡路大震災での苦い経験を生かして作られ、東日本大震災では多くの人の命を助けることができました。
こんなおくすり手帳も普段から持ち歩いていないと万が一の時に役割を果たせません。病院・薬局に行くときだけでなく、日頃からおくすり手帳を持ち歩いてほしいのです。あなたの命を守るために。
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【プロフィル】吉田聡
よしだ・さとし 1977年大阪生まれ。薬局・なくすりーな管理薬剤師。延べ30万人の服薬指導に当たる中、その薬が本当に必要なのかに疑問を持つ。近年、薬剤師の本質は「薬の引き算をすることにある」という考え方にたどり着く。患者さんに寄り添って薬を減らす服薬指導には定評がある。「薬の引き算をする薬剤師」として、講演などでも活躍中。
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