スズキも燃費不正…「ケチケチ戦略」裏目に 自動車業界の信頼低下避けられず
燃費データ取得時の不正な測定問題が自動車業界で広がりを見せ始めた。既に不正が明らかになっている三菱自動車に続き、これまで問題がないとしてきたスズキも一転、18日に不正を公表した。独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス規制逃れ問題で、自動車メーカーのモノづくりには世界的に厳しい目が注がれている。一連の燃費不正問題により日本の自動車産業の信頼低下は避けられず、試験方法を含めた態勢の見直しを迫られそうだ。
「(現時点では燃費不正の問題は)ない」。スズキの鈴木修会長は10日の決算会見で燃費不正の存在を否定した。だが、それからわずか1週間で一転して謝罪会見に追い込まれた。
スズキが不正を行ったのは「同社の社風が関係している」(アナリスト)との指摘がある。スズキの経営の真骨頂はコストを徹底的に削る「ケチケチ戦略」。それが今回の不正を招いたという見方だ。
実際、不正な測定方法が採られたのは試験コースに防風壁がなく、風で試験データが安定しなかったことに要因があり、鈴木会長も「防風壁の投資に至らなかった点は反省している」と認めた。わずかな投資を渋ったばかりに、消費者の信頼を損ねる事態に発展したというわけだ。
不正問題が経営に与える影響は甚大(じんだい)だ。消費者の信頼を裏切ったことによるブランドイメージの低下は販売を直撃する。
排ガス不正に揺れたVWの2015年の世界販売は前年比2%減と、13年ぶりに前年実績を割り込んだ。軽自動車4車種で燃費データ改竄(かいざん)問題などが発覚した三菱自は、4月の軽の国内販売が前年同月比約45%減と、ほぼ半減した。
スズキは不正な燃費測定が業績に与える影響について「現時点ではない」としている。不正の対象車の燃費値は適正な測定値と変わらないとしているため、保有者へのガソリン代の差額分などの補償が発生せず、新車販売も続けられるとみているためだ。
ただ、不正問題が引き金となり消費者離れが進めば販売への影響は避けられない。
18日の東京株式市場では、燃費試験で不正があったとの報道を受けて投資家に業績不安が広がり、スズキの株価は急落。一時は前日比433円(15.0%)安の2450円まで値下がり。終値は270円(9.4%)安の2613円と約2年ぶりの安値水準となった。
不正を謝罪した鈴木会長は記者会見で、再発防止に向け「風通しのいい組織にしないといけない」と言い切った。その言葉通りに組織を変えなければ、信頼回復は難しい。(今井裕治)
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