「ちょいパチ」が意味するもの

遊技産業の視点 Weekly View

 □ぱちんこジャーナリスト、LOGOSインテリジェンスパートナー・POKKA吉田

 「ちょいパチ」というカテゴリーが6月にも登場する。ぱちんこメーカー組合の日本工業組合(日工組)が4月20日に記者会見で明らかにした。ちょいパチの定義は「大当たり確率40分の1以上」「中央始動口(入賞するとデジタルが回る)の払い出し5個以上」となっている。

 2006年10月に開催された「手軽に安く遊べるパチンコ・パチスロキャンペーン」において、これと同様なカテゴリーである「遊パチ」というものが登場した。これの定義は、はじめは曖昧であり、後に「大当たり確率99分の1以上」となる。ただし、遊パチは、中央始動口の払い出し数に制限はなく、たまたま大当たりしない場合は他の高射幸性遊技機とかわらない消費金額スピードになっていたり、専門的な知識をあらかじめ持っている客でないと理解できない性能だったりするものもあり、手軽に安く遊べるカテゴリとしては有名無実のような状態に陥っていた。

 日工組は遊パチの取り組みよりもさらに安く遊べるカテゴリーとしてちょいパチを提案する。これは遊パチにはしばしば見られたわかりにくさも排除するようにしているので、初心者が初めて遊技してもわかりやすく、かつ、安い金額で大当たりを体感することができる。

 ぱちんこは出玉に応じた賞品交換ができるため、娯楽の範囲を逸脱しないように求められている産業だ。風営法は著しく射幸心をそそるおそれのある遊技機の設置を許容していないし、一時の娯楽の範囲を逸脱すれば刑法の賭博の罪にも該当するかもしれない。その意味では、ぱちんこは常にギャンブル性を抑制していくことが義務なのだ。

 遊パチは、警察庁の強い指導ともいえる要請に基づいて始まったキャンペーンだが、ちょいパチはどちらかといえば業界側が積極的に推進しようとしているものである。従来、規制の網をうまくすり抜けてギャンブル性の高い遊技機を開発してきたぱちんこ業界は、まさに自らの手によってギャンブル性の抑制に向かおうとしている。

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【プロフィル】POKKA吉田

 ぽっか・よしだ 本名・岡崎徹。1971年生まれ。神戸大学経済学部中退。著書に「パチンコが本当になくなる日」(扶桑社新書)など。2016年2月より本名の岡崎徹としてぱちんこ業界紙「シークエンス」発行人編集長。