ホンダ伝説のバイク、異例の人気 「CRF1000L」17年ぶり再登場

 
約17年ぶりに復活したホンダのバイク「CRF1000Lアフリカツイン」=埼玉県朝霞市

 アフリカツイン 異例の人気

 ホンダが2月22日に国内で発売したバイク「CRF1000L アフリカツイン」が、人気を呼んでいる。1980年代に世界有数の過酷なレース「パリ・ダカール・ラリー(パリダカ、現ダカール・ラリー)」を連覇した車種の市販モデルとして誕生したアフリカツインの名称を約17年ぶりに復活。オフロードでの高い走行性能など伝統を継承しつつ最新技術を駆使し、発売約1週間で受注が年間計画の1000台を超え、低迷する国内市場で異例の好発進となった。

 入社以来の悲願

 入社以来の悲願を実現できる-。開発子会社、本田技術研究所二輪R&Dセンターの山倉裕研究員(現・同社東南アジア現地法人研究員)は2013年に開発をスタートする際、胸の高鳴りを抑えられなかった。

 アフリカ西端の都市ダカールを目指すレースを想定し、2気筒(ツイン)エンジンを搭載するアフリカツインは1988年の初代発売以来、世界で累計約7万3000台を販売した。だが、大型車市場でのスポーツ車人気に押され、99年に生産を終了。同年に入社した山倉氏は現在も旧モデルを保有する熱烈なファンの一人として、社内で「アフリカツインをつくりたい」と訴え続けた。

 市場でも長距離ツーリングやオフロードを走る大排気量の「アドベンチャー(冒険)ツアラー」と呼ばれる車種が中高齢層を中心に支持を広げる中、ファンから期待の声が高まったことで復活が決まった。

 開発陣にとって最大の課題は、最新技術を取り入れて旧モデルの特徴を進化させることだ。山倉氏は「パリダカを走ったマシンの複製として出てきたので、オフロードの走行性能は妥協できなかった」と語る。

 エンジンは排気量を先代の750ccから1000ccに引き上げつつ、通常はシリンダー下部に置くオイルタンクをクランクケース内蔵にすることなどで小型化。車体下部を地上から25センチと3センチ高くし、荒れた道でも操作しやすい。

 ただ、操作性を重視して車高を高くしたり、車体の剛性を柔らかくしたりすると、走行時の安定性が失われる傾向がある。開発責任者を務めた飯塚直主任研究員は、「オフロードの操作しやすさと、高速道などでの安定性の両立に苦労した」と振り返る。

 その課題を解決したのが、エンジンと車体フレームを結ぶ「ハンガー」を通常の3、4点から6点に増やした車体設計だ。剛性の不足する部分をエンジンとつなぐことで補強。設計や試作を繰り返すなかで1点ずつ必要なハンガー数を検討し、フレームが太くなって重量が増えるのを防いだ。

 また、最新技術として、自動変速が可能な「デュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)」を初めて採用したモデルを設定した。運転者が変速する「MTモード」でもクラッチ操作をなくし、滑りやすい未舗装の道路でハンドルやアクセルの操作に集中できる。「より安全に走ることができ、風景を楽しむ余裕が生まれる。旅の相棒になる」(山倉氏)

 細部にこだわり

 デザインにもこだわった。車体の外装部品はサイズを抑えて扱いやすさを確保したが、ガソリンタンク回りは重厚感をつけて「乗車した際に誇りを感じられる」(デザイン開発室の小松昭浩研究員)。走行風を防ぐ前部の「ウインドスクリーン」には中央と両脇に通気口を設けて前後の風圧差を少なくし、快適な走行をできるよう工夫した。小松氏は「風洞テストやコンピューター解析、走行テストを繰り返し、数ミリ単位で調整した」と話す。

 アフリカツインは3月末までに約1300台を受注。生産する熊本製作所(熊本県大津町)の地震被害で一時的に納入待ちも予想される。だが、今月6日から順次稼働を再開しており、バイクライフを再開する中高齢層の「リターンライダー」などの人気が高い。

 日本自動車工業会によると、国内のバイク市場は82年に327万台を記録したが、2014年は約45万台と約7分の1まで縮小した。飯塚氏は「アフリカツインが走るのを見て、海外のようにバイクが大人の良い趣味として認められるようになってほしい」と語った。(会田聡)

 ≪企業NOW≫

 スポーツカーNSXも10年ぶり復活

 ホンダはアフリカツインに続き、スポーツ車「NSX」を約10年ぶりに復活させる。米国などで展開する高級車ブランド「アキュラ」が2月に受注を開始し、4月下旬から米オハイオ州で生産に着手。国内でも年内に受注を始める見込みだ。

 1990年に誕生した初代NSXはモノコック(車体構造材)の全てを世界で初めて軽量なアルミ製にし、先進性と斬新なデザインが多くのスポーツ車ファンに支持された。累計1万9000台弱を販売したが、欧米の環境規制などへの対応が追いつかず2005年に生産を終了している。

 しかし社内外で復活を要望する声は強く、伊東孝紳・前社長が新型車の開発を決定。今回の新型車はV型6気筒ツインターボエンジンに加え、3つのモーターを搭載したハイブリッド車(HV)として走りと燃費性能を両立した。後輪のモーターは駆動力を助け、前輪は左右2つのモーターが独立して動くことで操作性も高めている。

 米国での希望小売価格は15万6000ドル(約1700万円)から。

 昨年6月にトップに就任した八郷隆弘社長は「ホンダらしい挑戦的な商品を開発し、世界中に届ける」と宣言している。NSXやアフリカツインに続く魅力的な商品を生み出し、「らしさ」を取り戻すことができるかどうか注目だ。

 ■ホンダ

 【本社】東京都港区南青山2-1-1

 【設立】1948年9月

 【資本金】860億円(2015年3月末時点)

 【従業員】20万4730人(連結、15年3月末時点)

 【売上高】13兆3280億円(15年3月期)

 【事業内容】自動車や二輪車、汎用機の製造販売