米生まれ日本育ちのコンビニ、中国へ

高論卓説

 ■訪日旅行者を支える「便利店」

 海外など見知らぬ土地で、わが家の近くにあるのと同じチェーン店の看板を見かけると親近感を覚えることがある。訪日中国人旅行者にとって、日本のコンビニエンスストアもそのような店の一つではないだろうか。

 日本の流通市場にコンビニという業態が登場したのは1974年だ。この年の5月15日にセブン-イレブン「豊洲店」が東京都江東区に開店している。誕生から既に40年以上が経過しているが、この間、コンビニ業界では次々と新しいサービスが導入され、いまなお発展過程にあるといえる。

 なかでもATM(現金自動預払機)の設置は、特筆すべきサービスではないだろうか。昔は銀行のキャッシュディスペンサーは平日18時には閉まってしまい、急に現金が必要になってもどうしようもなかった。

 それがアイワイバンク(現セブン銀行)の登場で、コンビニの店舗内にATMが設置され、24時間お金の出し入れができるようになった。現在、ほとんどのコンビニの店舗にATMが置かれているのも、セブン-イレブンがそれまでなかった全く新しいサービスを導入したことが、嚆矢(こうし)となったものだ。

 米国で生まれ、日本で大きく変貌・成長を遂げてきたコンビニは、アジアを中心に海外へもその広がりを見せている。なかでも、経済成長著しい中国では日系コンビニ各社が進出し、中国人の日常生活にも浸透しつつある。

 中国語でコンビニは「方便店」もしくは「便利店」と表記される。基本的に日本同様24時間営業の店舗が主体だ。

 日系のコンビニは、セブン-イレブン(7-11)、ファミリーマート(全家)、ローソン(羅森)といった大手が中国でも競って店舗を展開している。ファミマとローソンが上海、セブンが北京を拠点に、それぞれ店舗網を広げつつある。現地資本のコンビニもあるが、日系の店舗運営ノウハウとの間にはまだ格差がある。

 日系のコンビニは、各社とも日本流をベースに現地向けに改良したサービスを展開している。おにぎりやおでんの販売など日本と類似した商品もある。だが、店内で調理され、ご飯とその上にのせるおかずの組み合わせを自由に選べるセブンの温かいお弁当(一種の丼)など、昼食時には長蛇の列ができるほどの人気商品となっている。これなど現地の消費者ニーズに細かく対応した日本型サービスの典型だろう。

 日本国内のコンビニ同様にキャッシュレス化も進んでおり、スマートフォンによる決済などは日本より進んでいる部分もある。

 各社とも店名の漢字表記などは日本と異なるが、店舗で使われている看板などのデザイン、配色は共通だ。訪日中国人旅行者の中には、中国のチェーン店が日本に進出していると勘違いする人もいそうだ。それほど中国でも日系のコンビニは身近なものとなりつつある。

 日本のコンビニでも中国の銀聯カードで決済できる店舗や、ATMで中国国内の銀行口座から日本円を引き出すことのできる店舗が増えている。免税対応を行っている店舗まである。昼間は観光で忙しい訪日中国人旅行者にとって、手持ちの日本円が乏しくなったときなど、24時間営業のコンビニは文字通りの「便利店」に違いない。

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【プロフィル】森山博之

 もりやま・ひろゆき 早大卒。旭化成広報室、同社北京事務所長(2007年7月~13年3月)などを経て、14年より遼寧中旭智業有限公司、旭リサーチセンター主幹研究員。58歳。大阪府出身。