今のままであってほしい浦和レッズ

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ACL決勝トーナメント1回戦で、浦和がFCソウルに勝利し、喜ぶ浦和サポーター=18日、埼玉スタジアム

 このまま浦和レッズであり続けられるの? 日頃、サッカーには関心を示さない人から問われ、改めて三菱自動車の燃費データ不正の波紋を思う。

 三菱自は日産自動車と資本業務提携、日産傘下で再建を目指す。それは企業の論理なのだが、付随してサッカー・Jリーグ名門チームの存続までが巷間(こうかん)、人の口の端にのぼる。

 「もちろん、委員会でも話題になった。Jリーグ内部でも大きな関心事であることは言うまでもない。ただ、大半は現状のままであってほしいというのが本音」。専門委員会委員を務める知人は、空気を語った。Jリーグはいま、新しい活性化策に取り組み始めている。面倒な話は避けて通りたい。

 ◆JリーグNo.1クラブ

 日産は横浜Fマリノスの親会社として74.5%の株式を有する。傘下に入る三菱自は、浦和の筆頭株主として50.63%の株式を持つ。これが、Jリーグ規約第25条5項にある「重大な影響下にある法人の経営を支配しうるだけの株式」(数字を明記していない)という表現に該当するとの見方である。

 Jリーグの村井満チェアマンは空気を反映してか、慎重に言葉を選ぶ。「1つのオーナーが2つのクラブを支配することは制限されているが、今回の件が該当するか、専門家を交えて情報を精査したい」。そこに日産のカルロス・ゴーン社長が話した「経営権は三菱自にある」「日産は必要時支援を行う」との表現が絡む。要は今後、子会社化が進むか否かで変化していくのだろう。

 浦和はJリーグNo.1のクラブである。確かに状況変化に存続の危機はあるものの、杞憂(きゆう)としてはね返す力を持っていると思うのは欲目だろうか。

 浦和の2015年度の営業収入は約60億9000万円。3年連続の増収で、6年ぶりに60億円の大台に乗せた。J1クラブ14年度の平均営業収入は約32億9000万円だから群を抜く。内訳をみると、収入の3本柱である入場料が約21億7000万円、広告収入が約25億5000万円、グッズ収入約6億9000万円である。

 注目したいのは入場料収入。J1クラブの平均約6億8000万円(14年度)と大きな差異が見て取れよう。またJ1クラブの平均広告収入は約16億円で入場料収入の2倍強なのに対し、浦和はほぼ同額であった。

 早稲田大学大学院スポーツ科学研究科の平田竹男教授は著書『スポーツビジネス最強の教科書』において、浦和と他クラブとの違いを指摘する。「広告収入に依存するのではなく、地元地域の住民を中心とした顧客からの収入とも言える入場料収入の拡大を基盤とした経営努力が(中略)発展の要因となった」

 実は、浦和の経営努力とは親会社、三菱自の過去の経営不振に始まった。00年と04年に発覚したリコールがそこに重なる。

 ◆地域型への移行も

 親会社からの収入が減額される不安におびえるくらいなら、自らの経営体質を改善すべし。まずは損失補填(ほてん)も含む親会社からの広告料収入に匹敵する入場料収入を目指した。加えてグッズ収入の増加、さらに親会社およびグループ企業以外からの新規スポンサーを公開入札によって獲得していく。方策は徐々に実を結んで収入は拡大。05年には三菱自との損失補填契約を解消、いち早く親会社依存から脱却した。

 12年には法人名を三菱自動車フットボールクラブから浦和レッドダイヤモンズに改称。今季の純利益は約5100万円、5年連続黒字を計上している。となれば、アルビレックス新潟のような存在になることが可能ではないか。

 われわれ世代には、「サッカーと三菱」への郷愁がある。1950年中日本重工サッカー部として創部、64年三菱重工サッカー部となり、65年からの日本リーグ参画、93年のJリーグ創設メンバーである。三菱自はその時から。杉山隆一、横山兼三ら名選手の姿が目に浮かぶ。

 遅れていた日本のサッカー報道をリードした東京12チャンネル(現テレビ東京)の「ダイヤモンドサッカー」は三菱商事をはじめオール三菱が支援。スポーツ史に残る名番組となった。

 三菱自の株式出資額は8100万円。どうか、グループ各社で持ち合い、名称を存続してはもらえないか。そう願うのは私だけではあるまい…。(産経新聞特別記者 佐野慎輔)