LTP含有乳タンパク分解物が疲労と筋肉痛を軽減

 
研究成果の説明会に参加した(左から)アサヒグループホールディングス・コアテクノロジー研究所の中村康則所長、青山学院大学陸上競技部の原晋監督、同研究所乳酸菌技術部の宮﨑秀俊副主任=5月23日、東京都中央区

 発酵乳などに含まれる乳タンパク由来の成分に、運動時の疲労感や筋肉痛を軽減する働きがあることが分かった。激しいトレーニングに日々取り組むスポーツ選手らにとって朗報となりそうだ。

 体づくりのサポートにも役立つことが期待されるこの成分は「ラクトトリペプチド(LTP)」含有乳タンパク分解物と呼ばれ、乳タンパクを麹(こうじ)菌由来の酵素で分解したものだ。アサヒグループホールディングス(東京都墨田区)のコアテクノロジー研究所による最新の研究で明らかになった。

 同研究所は、“箱根駅伝連覇”で知られる青山学院大学陸上競技部(長距離)の協力を得て、この成分の働きに関する実証実験を行った。部員48人を2グループに分け、一方は「LTP」含有乳タンパク分解物を含むタブレットを、もう一方は含まないタブレットを1日2回、4週間の合宿期間中に継続して摂取させ、合宿前後に疲労感や筋肉痛に関するアンケートを実施した。

 その結果、摂取したグループは、そうでないグループと比べ、疲労感や筋肉痛の悪化が抑えられた。同部の原晋監督は「五輪で世界と戦うためには健康サポート体制が欠かせない。そのためのツールが増えることは非常に良い」と歓迎している。

 同研究所は昨年、日常的に体を動かさない運動不足気味の中高年を対象に、同成分の摂取によって運動時の心拍数の上昇を抑えることなどを実証済みだ。

 「LTP」に関連する研究成果は他にもある。乳酸菌飲料「カルピス」を原点とした発酵乳の研究を通じて、血圧降下作用などが確認されている。「LTP」含有乳タンパク分解物を含んだ商品としては、血圧が高めの人に向けた機能性飲料「『アミール』WATER300」などが既に商品化されている。

 同研究所の中村康則所長は「新しい機能が分かったので、運動時の疲労回復や筋肉痛を緩和する一般向けの飲料やサプリメントの新商品開発につなげたい」と話している。