ドコモ、8K動画を無線伝送 5Gのモバイル通信 KDDIも新技術
ケータイWatch27日まで東京ビッグサイトで「ワイヤレスジャパン2016」「ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP)2016」が開催された。2020年ごろの商用化を目指して開発が進む5G(第5世代)のモバイル通信技術についても意欲的な展示が並んだ。
NTTドコモが今回披露したのは、ノキアとともに開発した、8K動画のリアルタイム伝送技術だ。70ギガヘルツ帯、1ギガヘルツ幅という高い周波数かつ広い帯域を利用するもので、1つの基地局装置当たり毎秒2ギガビットを超える通信速度を達成。会場では、実際に2つの移動局装置を用意して、それぞれにビームフォーミングして電波を発射し、毎秒1ギガビットずつ、合わせて2ギガビット程度の速度を達成した。
電波の様子も可視化
ビームフォーミングされる電波はスイッチを使って、数十マイクロ秒程度で時間差で切り替えられており、今回の展示では、電波の様子を可視化するという試みも披露された。
担当者によれば、8Kという高精細・大容量なコンテンツを無線で伝えることが初めてだったため、有線であれば途切れなくデータを送出できるところ、いかにパケット化して送出するか、あるいは電波が遮られてデータの伝送が途切れた場合にどう再生を続けるのか、といった点も含めて研究・開発を進めたという。
無線技術の開発が進む一方、基地局より先、いわゆるコアネットワークで新しい概念としてドコモが提唱するのが「ネットワークスライス」。ひとことで言えば「サービスごとに仮想ネットワークを用意する」というもの。現時点で想定される具体的な用途として、例えばM2M/IoTで、設置される場所が固定されるような機器については移動時の処理が不要になるため、そうした機能を省いた設備を仮想的に構築する。余計な機能がつかないため、コストダウンも期待されるのだという。17~18年ごろには標準化され、20年を迎える前に商用化される可能性がある。
一方、5Gで実現するものの一つとして自動車の自動運転が提唱される中、その実現のためには車車間通信や位置情報など複数の機能が求められる。自動車1台で、複数のスライスへ登録するには、新しいパラメーターが必要になるとみられ、現在そうした点の議論を進めているという。
このほか会場では、5G用のシミュレーターも紹介された。今回は三重県の伊勢志摩を舞台にしたシミュレーション。折しもサミット(主要国首脳会議)の舞台ということで、タイムリーな形で5G用の装置を現地で展開した場合の状況が紹介されていた。
災害時の通信手段
5G向けの技術としてKDDI研究所のブースで紹介されていたのが「D2D」、デバイス間通信の技術だ。これは、従来であれば基地局とやり取りするスマートフォンなどの端末が、最寄りの基地局が混雑している場合、近くの端末を経由して通信するというもの。通信量がさらに増えると見込まれる中で、基地局設備への負担軽減を図る災害時のいざというときの通信手段としても期待される。
このときD2Dで通信するのは、LTEだけではなく、Wi-Fiスポットなど、より高速で通信できるルートを利用する形。D2Dでデータを受信する端末は、併せて最寄りの基地局とも同時に通信しておき、2つのルートの通信を束ねて高速通信する。「束ねて通信する」という部分は、似たコンセプトの技術として既にキャリアアグリゲーションが存在するものの、担当者によればキャリアアグリゲーションは物理レイヤーでの処理となる一方、D2Dで束ねて通信するのはその上のレイヤーで実現しているという。
D2Dとは異なる技術で、大容量コンテンツを効率良く処理できるものとして紹介されていたのが、60ギガヘルツを使った技術。これはアンテナの周辺数メートルだけ60ギガヘルツ帯の電波が届くサービスエリアを作り上げ、その場を通りがかったユーザーの端末に、大容量のコンテンツを配信できるもの。通信速度は端末1つ当たり毎秒6.1ギガビットに達する。ただ、サービスエリアが狭いため、ユーザーがその場に滞在する時間が短くなる。もしダウンロードし切れない場合は、ユーザーが次に訪れるであろう場所のアンテナにコンテンツを先回りして配信しておき、通りがかったら通信する、という仕組みも用意している。(インプレスウォッチ)
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